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ゲージに使われる工具鋼の選び方

2025/04/21

  • 丸物部品
ゲージに使われる工具鋼の選び方

精密測定工具である「ゲージ」は、その寸法精度と耐久性が品質を決定づけます。ゲージの性能を支える重要な要素の一つが、使用する鋼材の選定と熱処理方法です。本コラムでは、ゲージに多く使用される代表的な工具鋼の特徴と、「サブゼロ処理」による性能向上の効果について解説します。

ゲージとは?

ゲージとは、部品や製品の寸法・形状・位置関係などを正確に測定・判定するための精密測定工具です。ノギスやマイクロメータのように数値を読み取るタイプとは異なり、ゲージは「通る/通らない」「当たる/当たらない」といった判定によって合否を判断する“比較測定”の代表的な工具です。

テーパーリングゲージ

プラグゲージ、スナップゲージ、リングゲージ、ブロックゲージなど種類は多岐にわたり、生産現場では量産部品の品質管理や検査工程に欠かせない存在です。高精度な寸法管理を実現するためには、ゲージ自体の寸法精度・耐摩耗性・安定性が非常に重要であり、それらは使用される材料と熱処理方法に大きく依存します。

ゲージに使用される代表的な工具鋼とその特徴

続いて、ゲージに採用されることが多い工具鋼の種類と、それぞれの材料の特徴について解説いたします。

炭素工具鋼(SK)

炭素工具鋼(SK)は、比較的安価で入手しやすく、焼入れ後の硬度が高いことが特徴です。SK3、SK4、SK5、SK7などが代表的な鋼種で、硬度はHRC63程度です。一方で、油冷による焼入れを行うため、熱処理時の歪みや変形が大きく、後加工での歪み補正が必要となります。また、炭素量が多くクロム(Cr)の含有量は少ないため、硬くなる一方で、延性や被削性、被研削性は劣る傾向があります。

冷間合金工具鋼(SKS)

冷間合金工具鋼(SKS)は、Crなどの合金元素を少量添加した低合金工具鋼で、炭素工具鋼に比べて温度変化による寸法の変動が少なく、より安定した精度が得られます。SKS2、SKS3、SKS31などが代表的で、焼入れ後の硬度はHRC60〜63程度です。油冷で焼入れを行いますが、Crの添加によって歪みが抑えられており、ブロックゲージやマスターリングといった高精度測定ゲージに適しています。

ダイス鋼(SKD)

ダイス鋼(SKD)は、SKD11、SKD12、SKD61などが代表的で、高度な寸法精度が求められる用途に使われる合金工具鋼です。SKD11は焼入れ後にHRC60程度、SKD12・SKD61はHRC55程度の硬度が得られます。空冷によって焼入れされるため、寸法安定性に優れ、熱処理による歪みが少ないのが特徴です。Crの含有量がSKSより多いため、耐摩耗性や耐衝撃性が高く、当社では細長い形状の特殊ゲージに用いられています。価格は高めですが、信頼性が非常に高い材料です。

ハイス鋼(SKH)

ハイス鋼(SKH)は、SKH51やSKH55といった高速度工具鋼で、非常に高い硬度と耐摩耗性、耐熱性を備えています。焼入れ後にはHRC64程度に達し、高温環境下での使用にも耐えられるため、特に過酷な条件下での高精度ゲージに適しています。Crの含有量は最も多く、空冷での焼入れが可能なため、熱処理による変形が少なく、耐久性と寸法安定性に優れる一方、価格は他の鋼材よりも高価です。

ゲージ用工具鋼の比較一覧表

ここまでの内容を表にまとめました。ゲージ用工具鋼の選定にお役立てください。

鋼種代表鋼材焼入硬度冷却方式Cr含有量特徴用途価格
炭素工具鋼(SK)SK3, SK4, SK5, SK7HRC 63 程度油冷少ない硬度高いが歪みやすく加工性に劣る汎用ゲージ、コスト重視の用途安価
冷間合金工具鋼(SKS)SKS2, SKS3, SKS31HRC 60〜63油冷やや多い寸法安定性が良好ブロックゲージ、マスターリング中程度
ダイス鋼(SKD)SKD11, SKD12, SKD61HRC 55〜60空冷多い耐摩耗性・耐衝撃性に優れる特殊ゲージ、金型部品高価
ハイス鋼(SKH)SKH51, SKH55HRC 64 程度空冷非常に多い高硬度・耐摩耗性・耐衝撃性に合わせて高耐熱性も高温環境や高精度が求められるゲージ高価

精密ゲージの品質を左右する要素

続いて、ゲージに採用されることが多い工具鋼の種類と、それぞれの材料の特徴について解説いたします。

材質選定

精密ゲージに求められる最大の要件は「寸法の安定性」と「長期間の使用に耐える耐久性」です。これを実現するには、単に硬度の高い材料を選ぶだけでは不十分で、適切な鋼材の選定と、それを活かすための処理技術の組み合わせが重要です。

たとえば、ゲージに使われる代表的な鋼材であるSKDやSKHは、耐摩耗性・耐衝撃性・耐熱性に優れる高性能鋼材であり、高精度かつ過酷な使用環境にも対応できます。しかし、これらの鋼材は高価なため、一度使って終わりではなく、いかに「長く使えるか」がコストと品質の両面で重要になります。

サブゼロ処理

そこで有効なのが「サブゼロ処理」です。焼入れ後の鋼材を0℃以下に冷却し、残留オーステナイトをマルテンサイトに変態させることで、寸法変化を防ぎ、経年による品質低下を抑える処理です。ゲージにとっての最大の敵である“わずかな寸法の狂い”を防ぐために、サブゼロ処理は非常に効果的です。

メッキ処理

さらに、ゲージ表面にメッキ処理を施すことで、摩耗からの保護が可能になります。ニッケルメッキやクロムメッキなどを用いれば、硬度を上げつつ表面の滑りも良くなり、測定対象との接触摩擦を軽減することができます。また、メッキは剥離・再加工が可能なため、高価なSKD・SKH材の再利用にもつながります。これは環境配慮とコスト削減の両面でメリットがあります。

材料知識と熱処理技術の理解が、長寿命・高精度なゲージ製作のカギ

このように、高性能鋼材に対して適切な熱処理と表面処理を組み合わせることが、ゲージの性能を最大限に引き出す鍵となります。材料の特性を理解し、それに応じた処理技術を的確に選択できるかどうかが、長寿命で信頼性の高いゲージづくりにおける大きな分かれ目なのです。

当社だからこそ可能な特注ゲージ製作・長寿命化提案

当社では創業以来、当社では自動車業界の部品を中心に生産しており、特にゲージの製造を行っておりました。独自の加工ネットワークであらゆる種類の処理に対応しております。これまでに培ってきた実績やノウハウをもとに、最適な表面処理のご提案を行い、ゲージの長寿命化を実現いたします。

以下に、当社が選ばれる理由を具体的にご紹介します。

耐摩耗性・高強度が必要な製品への長寿命化提案に自信あります!

当社ではローラーやシャフト、シリンダー、ピンなど、消耗が激しい丸物加工品を多く取り扱っており、これらの製品に対する長寿命化を実現する技術提案に自信があります。

創業以来、当社では自動車業界の部品を中心に生産しており、現在は産業機械装置の部品も含めて多品種少量生産を行っております。特に当社にご依頼いただくのは、消耗が激しい丸物加工品が多くなっています。ローラーやシャフトは、なるべく交換をせずに長く使用したいというニーズが強い一方で、精度は高くなければいけないという、要求仕様も多い製品です。当社ではこうした丸物部品に対して、歪みが少なく、高強度・高硬度を実現する焼入れ・表面処理をご提案しております。

一方で当社では、「とにかく硬く、長持ちするようにしたい」というお客様に対して、「あえて消耗しやすくして交換頻度は多くするが、コストを抑える」というご提案も行っております。必要以上に製品の強度や硬度を向上させると、仕上げ加工が困難となり、コストも異常なほど高くなってしまいます。そのため当社では、あえて相手部材より負けさせてコストを抑えるという提案も行っています。

当社では、金属コーディネーターとして丁寧にヒアリングを行い、お客様が本当に必要とする機能を実現するための焼入れ・表面処理を選定しております。焼入れや表面処理については、独自の加工ネットワークであらゆる種類の処理に対応しております。さらに長寿命化だけでなく、機能を改善するための形状変更や機構改善など、型にはまらない斬新なVE・VA提案を幅広い範囲で行っております。耐摩耗性や高強度が必要な丸物製品は、金属コーディネーターに一度ご相談いただければ、当社から最適な技術提案をいたします。

金属コーディネーターとは?

小径から大径まで、様々なゲージの旋盤加工に対応

当社にご相談いただくことが多いのは、ローラーやギヤシャフト、シリンダー、ピンなどの丸物加工品です。φ5の小さいピンからφ100のピンまで、長さも様々な丸物製品に対応しております。当社が最も得意とするのは、手にのるくらいのサイズがメインです。特にΦ300~600までの、馬力がない旋盤では削ることができないような、クレーンを用いて機械にセットする必要がある、やや取り回しがしづらいような中型丸物部品について、多くのお客様からご相談をいただいております。協力会社の加工ネットワークも駆使することで、最大φ900までの比較的大径な丸物加工まで対応可能です。

さらに当社では、シャフトなどの高精度な丸物部品のご相談も多くいただいておりますが、このような製品については円筒研削(円筒研磨)による仕上げ加工まで対応しております。耐摩耗や強度が求められる丸物製品は、回転運動しながら使用される製品のため、寸法公差や真円度など、高い精度が求められます。こうした精度が必要なシャフトについても、安心して当社にお任せいただけます。
※長さ、形状、材質など各種条件によりますが、軸物の寸法公差はh7級にて基本的には対応しております。

単品、小ロットでも短納期・特急対応

当社にご依頼いただくことが多いのは、耐摩耗・高強度で長寿命化が求められる製品です。このような製品は、生産ラインや機械装置においても重要な機構部品であることが多く、万が一修理やトラブルになった際は、すぐに必要となる製品であることが多いです。そして緊急時には、個数は200個のようなロットではなく、少数や単品での発注が多くなります。しかし単品・小ロットでの依頼は、小回り対応や緊急対応が求められるため、対応不可とお断りされるケースも多くなります。

当社では、このような他社でお断りされた単品・小ロットの製品の加工依頼を多くいただいております。特に当社の特急対応には、既存のお客様からは価値を感じていただいているポイントです。いますぐ製品を加工してほしい!という場合も、まずは金属コーディネーターの当社にご相談ください。

既存製品のコスト削減についても、製品の使用目的や環境をお伺いした上で、最適な部品設計をいたしますので、コストダウンについてもお任せください!

ゲージの加工事例

続いて、実際に当社で製作したゲージの加工事例をご紹介いたします。

テーパーリングゲージ

テーパーリングゲージ

こちらはテーパーリングゲージです。サイズはΦ92×90mmで、材質はSKS3を使用しております。加工工程としては、旋盤加工、マシニング加工、サブゼロ処理、防錆黒染め、研磨、刻印を行っています。

本製品は、測定用途に使用されるテーパーリングゲージです。何度も使用されることを想定し、耐摩耗性を向上させるためにサブゼロ処理を施しました。また、防錆対策として黒染め処理を実施し、長期間の使用でも性能を維持できる仕様としています。

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テーパープラグゲージ

テーパープラグゲージ

本製品は、Vプーリーから異音がするというお問い合わせから当社にご相談いただきました。原因を調べると、他社製のテーパーとプーリーが合っていないことが原因と判明しました。そのため当社からは、①プーリーとテーパーを両方作る、または②ゲージを作る、の2つ方法をご提案いたしました。その結果、今回はVプーリーとシャフトの図面をもとにテーパープラグゲージを製作しました。

本製品は測定用として使用され、何度も出し入れを行う用途のため、耐摩耗性が求められました。そのため、焼入れ・焼き戻しに加え、サブゼロ処理を施し、長寿命化を実現しています。

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ゲージ・その他製品に関する加工事例はこちら

ゲージのことなら、平野鉄工にお任せください!

ローラー・シャフト旋盤加工 長寿命化ナビを運営する平野鉄工株式会社は、丸物加工品を専門とし、耐摩耗性や高強度が求められる製品の長寿命化と機能向上を実現する技術提案に自信を持っています。当社の金属コーディネーターが丁寧なヒアリングを行い、焼入れや表面処理の最適な選定を行うだけでなく、形状変更や機構改善などの斬新な提案も行い、お客様にとって最適な解決策を提供します。

対応可能な製品は、直径φ5の小さいピンからφ100のピンまで、長さも様々な丸物製品に対応しております。特にΦ300~600までの、馬力がない旋盤では削ることができないような、クレーンを用いて機械にセットする必要がある、やや取り回しがしづらいような中型丸物部品について、多くのお客様からご相談をいただいております。協力会社の加工ネットワークも駆使することで、最大φ900までの比較的大径な丸物加工まで対応可能です。

ローラー・シャフト旋盤加工 長寿命化ナビでは、多様なニーズに応える高い技術力と柔軟な対応力を持ち、お客様の製品開発を強力に支援します。丸物加工品の製造において、耐久性や精度を求めるなら、ぜひローラー・シャフト旋盤加工 長寿命化ナビにお任せください。お客様のご相談をお待ちしておりますので、どうぞお気軽にお声がけください。

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