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SUJ2の特徴と加工のポイントから熱処理まで徹底解説!

2025/08/27


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SUJ2の特徴と加工のポイントから熱処理まで徹底解説!

「部品には、とにかく硬さと耐摩耗性が欲しい」 「図面にSUJ2と書いてあるけど、加工は難しいのだろうか?」 「S45Cといった一般的な鋼材と、何が違うんだろう?」

もしあなたが、このような疑問をお持ちなら、この記事がきっとお役に立ちます。ベアリングでお馴染みのSUJ2は、非常に優れた特性を持つ一方で、その性能を最大限に引き出すには材料の深い理解が不可欠です。

この記事では、SUJ2の基本的な特徴から、性能の鍵を握る「熱処理」、そしてコストと品質を左右する「加工のポイント」まで、分かりやすく解説していきます。

SUJ2とは?

SUJ2は、JIS規格で定められた「高炭素クロム軸受鋼鋼材」の一種です。

その名の通り、ベアリング(軸受)に使われることを目的に開発された鋼材で、「Steel Use JIS」の頭文字から「SUJ」と呼ばれています。(※諸説あり)化学成分の中でも特に炭素(C)とクロム(Cr)の含有量が多く、これがSUJ2の優れた硬さと耐摩耗性の源泉となっています。

SUJ2の代表的な機械的性質

  • 硬度: SUJ2の最大の特徴は、熱処理による硬度の劇的な変化です。加工前の「焼なまし状態」ではHBW201以下と比較的やわらかいですが、熱処理後はHRC58~64という非常に高い硬度を誇ります。
  • 耐摩耗性: 非常に優れており、部材同士がこすれ合うような摺動部や、高速で回転する部品に最適です。
  • 靭性(粘り強さ): 高い硬度と引き換えに、衝撃に対する粘り強さは高くありません。そのため、強い衝撃がかかる用途には注意が必要です。

SUJ2が主に用いられる用途

その名の通り、SUJ2の最も代表的な用途はベアリングの玉(ボール)軌道輪(レース)です。その他にも、その優れた耐摩耗性を活かして、以下のような精密部品にも広く採用されています。

  • リニアガイドやボールねじのシャフト
  • 金型のガイドピン、エジェクタースリーブ
  • 高精度が求められる治具の消耗部品

SUJ2の熱処理について

SUJ2を語る上で、「熱処理」は絶対に欠かせない要素です。市場に流通しているSUJ2(焼なまし材)は、あくまで加工しやすいように調整されたものです。熱処理を経て、初めてSUJ2本来の性能を発揮できます。

SUJ2の代表的な熱処理プロセス

  1. ① 焼なまし (球状化焼なまし) 切削加工がしやすいように、鋼の内部組織を均一でやわらかい状態に整える処理です。通常、この状態で材料メーカーから供給されます。
  2. ② 焼入れ 約830~850℃の高温に加熱後、油で急冷することで、鋼の組織を「マルテンサイト」と呼ばれる非常に硬い組織に変化させます。これにより、SUJ2は非常にに硬くなります。
  3. ③ 焼戻し 焼入れしたままでは硬すぎて脆いため、約150~180℃の比較的低い温度で焼き戻し、硬さをわずかに調整しつつ、粘り強さを少しだけ向上させます。これにより、実用的な強靭さが得られます。

この3ステップを経て、SUJ2はただの鋼材から、高硬度・高耐摩耗性を備えた高性能な部品材料へと生まれ変わるのです。

SUJ2の切削加工と研削加工

SUJ2の加工は、「熱処理前」と「熱処理後」で、その難易度と方法が全く異なります。コストと品質を両立させるには、この2つのステージを意識した加工計画が重要です。

Stage1: 熱処理前の「生材」の加工

熱処理前の焼なまし状態のSUJ2は、S45Cなどの一般的な炭素鋼と同じような感覚で加工できます。被削性は良好で、一般的な超硬工具を用いた旋削、フライス加工、穴あけが問題なく行えます。

ポイント: コストダウンの鍵は、この段階で可能な限り最終形状に近いところまで加工(粗加工)しておくことです。

Stage2: 熱処理後の「高硬度材」の加工

焼入れ・焼戻しを経てHRC60を超えたSUJ2は、一気に加工が難しくなります。

  • 切削加工: 通常の超硬工具では全く歯が立たないため、ダイヤモンドに次ぐ硬さを持つCBN(立方晶窒化ホウ素)工具の使用が必須となります。この加工法は「ハードターニング(高硬度材旋削)」とも呼ばれ、従来は研削でしか不可能だった高精度な仕上げを切削で行うことができます。
  • 研削加工: 高硬度材の最終仕上げとして、最も一般的な加工法です。砥石を高速で回転させ、μm(マイクロメートル)単位で表面を削り取ることで、極めて高い寸法精度と面粗度を実現します。熱処理によって生じたわずかな歪みを取り除く役割も担っています。

また、SUJ2をはじめとする焼き入れ材は、あらかじめSUJ2の生材を一定の形状まで加工(粗加工)し、熱処理を済ませた状態の「半製品」をストックしておくことで、お客様からご注文をいただいた後、最終の仕上げ工程(切削・研削)のみで対応することができます。

最終的な使用用途によっては、熱処理を必要としない場合もございます。その際は、熱処理前の「生材」の状態での加工・納品をすることで納期を短縮することも可能です。

【材料選定のポイント】S45C・SCM435・SKD11との違いは?

実務では、「どの材料を選ぶべきか?」という判断に迫られることがよくあります。ここでは、代表的な鋼材とSUJ2を比較してみましょう。

比較表で見る4つの鋼材

項目SUJ2S45CSCM435SKD11
硬度 (熱処理後)◎ HRC58~△ HRC45~55〇 HRC45~55◎ HRC58~62
耐摩耗性
靭性(粘り)
加工性(生材)
コスト◎ (安価)× (高価)

使い分けのポイント

  • S45Cから乗り換えるケース: S45Cに熱処理(高周波焼入れなど)をしても、硬度や耐摩耗性がまだ足りない場合にSUJ2が選ばれます。
  • SCM435と迷うケース: SCM435は靭性(粘り強さ)に優れるため、強度や衝撃性が求められる構造部品に向いています。一方、表面の硬さと耐摩耗性を最優先したい場合はSUJ2に軍配が上がります。
  • SKD11と迷うケース: SKD11(金型用工具鋼)も非常に高い硬度と耐摩耗性を持ちますが、SUJ2よりも高価です。耐摩耗性に加え、焼入れ変形を極力抑えたい、より高い寸法安定性が求められる金型部品などで使われます。コストと性能のバランスを見てSUJ2が選ばれることも多々あります。

SUJ2の加工実績

圧延用ローラー

こちらは圧延時に使用される圧延用ローラーです。サイズはΦ80×36mmで、材質はSUJ2を使用しております。加工工程としては、まず旋盤加工を行い形状を作り、その後マシニング、真空焼入れ、旋盤仕上げ、そして研磨加工を実施しています。

本製品は、ローラー部がダイヤ状のテーパーになっており、テーパー部の精度が非常に高いことが特徴です。そのため、焼入れ後に研磨で仕上げを行っています。さらに、テーパー部の精度が高く、消耗も激しいため、材料を元々のS45CからSCM440、そしてSUJ2へと変更し、焼入れ方法を真空焼入れとすることで、耐摩耗性と精度向上を図り、お客様が求めていらっしゃった長寿命化を実現しております。

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今回は、高炭素クロム軸受鋼「SUJ2」について詳しく解説しました。

  • SUJ2は、熱処理を前提とした高硬度・高耐摩耗性材料
  • 加工工程は「熱処理前(粗加工)→熱処理→熱処理後(仕上げ加工)」の計画が重要
  • 材料選定では、求める性能(硬度、靭性)とコストを他の材料と比較検討することが大切

SUJ2は、正しく理解し、適切なプロセスを踏むことで、他に代えがたい優れた性能を発揮してくれる材料です。そのポテンシャルを最大限に引き出すためには、材料特性を熟知した加工業者との連携が欠かせません。

「SUJ2の加工をどこに頼めばいいか分からない」「この部品、どの材料で作るのがベストだろう?」 そんなお悩みをお持ちでしたら、ぜひ私たちローラーシャフト旋盤加工長寿命化ナビにご相談ください。設計思想に合わせた最適な材料選定から、熱処理・加工まで、トータルでサポートいたします。


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