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ギヤの定義から種類・製造加工まで

2024/10/22

  • ギヤ
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ギヤの定義から種類・製造加工まで

ギヤは、多くの機械装置において中心的な役割を果たす部品であり、その重要性は非常に大きいです。ギヤは、動力の伝達や速度の変換、トルクの調整など、機械の基本的な機能を実現するために不可欠な要素です。私たちが日常的に使用する多くの機械や装置、例えば自動車や工業機械、家電製品などには、必ずと言っていいほどギヤが組み込まれています。

本コラムでは、ギヤに関する基礎知識から、ギヤの種類まで幅広く解説します。

ギヤ(歯車)とは

ギヤは、円盤や円筒の外周に歯形が刻まれた部品で、2つ以上の歯車が噛み合うことで動力を伝達・変化させる役割を果たします。歯車と呼ばれることが多く、最も小さいものはピニオンと呼ばれます。歯車には高精度、耐久性、小型化や軽量性が求められます。AとBのギヤの大きさや歯数のピッチを変えることで、回転速度や回転力を調整することが可能です。

<象徴としてのギヤ>

ギヤは労働や工業の象徴とされ、日本の5円玉のデザインにも使われています。ギヤはネジやバネと並んで、幅広い製品に使用され、形状や材料は用途に応じて多様です。

<ギヤの精度と耐久性>

ギヤは高精度で製作されますが、摩耗による変形が起こることがあります。特に歯厚の寸法は、動作と強度に大きく影響します。歯厚の測定方法やその難易度、解決策についても重要なポイントです。

ギヤ(歯車)の種類

ギヤには、使用目的に応じて多様な形状が存在します。

平歯車(スパーギヤ)

平歯車(スパーギヤ)は、軸に対して直線的に並んだ歯が特徴の機械部品で、平行軸間での効率的な動力伝達を実現します。このタイプの歯車は、製造が容易で、複雑な機構を必要とせず、省スペース性に優れています。特に大型機械や自動車部品、おもちゃなど、幅広い用途で利用されています。しかし、そのシンプルな構造から、同時に噛み合う歯の数が限られているため、振動や騒音が発生しやすいというデメリットもあります。これにより、静粛性が求められる環境では、他の歯車タイプに比べて不利になることがあります。

はすば歯車(ヘリカルギヤ)

はすば歯車(ヘリカルギヤ)は、歯が軸に対して斜めに配置された歯車で、平行軸間での動力伝達に優れたパフォーマンスを発揮します。この斜めの歯形状により、平歯車に比べて振動や騒音が抑えられ、特に高回転での使用に適しています。さらに、連続的に複数の歯が噛み合うため、強度が高く耐久性にも優れています。これにより、精密機械や自動車のトランスミッションなど、高い性能が求められる場面で広く採用されています。

ただし、はすば歯車の設計には注意が必要です。歯が斜めに配置されているため、回転力だけでなく軸方向にも力(スラスト荷重)が働きます。これにより、軸受けにはアンギュラボールベアリングやテーパーローラーベアリングといった複雑な構造が必要となり、結果として製造コストが上昇します。また、平歯車に比べて製造が難しいため、精度が要求される生産工程が必要です。

内歯車(インターナルギヤ)

内歯車(インターナルギヤ)は、歯が円筒の内側に配置された特殊な歯車で、主にピニオンと組み合わせて動力伝達を行います。この設計により、歯車機構をコンパクトにまとめることができ、省スペース性に優れた特徴があります。特に、遊星歯車機構では内歯車が中心的な役割を果たし、高い減速比を実現するために利用されています。

内歯車の大きな利点は、装置を小型化できる点にあります。例えば、遊星歯車機構では内歯車とサンギヤ、プラネタリーギヤが組み合わさり、効率的な動力伝達が可能です。この構造は、入力軸と出力軸を同一軸上に配置できるため、機械全体の設計が簡素化され、スペースを有効活用できます。

しかし、内歯車にはいくつかの課題もあります。まず、内側に歯があるため、外側からの加工が難しく、特別な機器が必要になります。また、ピニオンとの干渉リスクも存在し、適切な設計が求められます。特に、インボリュート干渉やトロコイド干渉などの問題が発生しやすいため、噛み合わせる歯数や設計精度には注意が必要です。

ラック&ピニオン

ラック&ピニオンシステムは、回転運動から直線運動、または直線運動から回転運動への変換を行う、重要な機械要素です。このシステムは、自動車のステアリング機構をはじめ、搬送装置や工作機械など幅広い用途で活用されています。ラック(Rack)は歯が刻まれた平らな板や棒であり、無限大の半径を持つ歯車と考えることができます。一方、ピニオン(Pinion)は小さな歯車で、ラックと噛み合うことで回転運動を直線運動に変換します。

ラック&ピニオンの最大の長所は、ロングストロークが可能である点です。ラックの長さには制限がないため、長尺のラックを使用することで広い範囲での直線運動が可能となります。また、ラックギヤの形状がシンプルで強度を高めやすいため、大きな荷重や高速搬送にも対応できます。これにより、自動車のステアリングや重機の操作など、精密で強力な動作が求められる場面で広く採用されています。

しかし、ラック&ピニオンには短所も存在します。例えば、システムが高い負荷(摩擦力)を受けやすく、長時間の使用で摩耗しやすくなります。また、動作中の騒音が大きくなる傾向もあります。特に自動車の操舵システムでは、ステアリングホイールを回すことで生じる力や路面からの反力が噛み合い面に大きな負荷をかけるため、これらの課題に対する適切なメンテナンスが重要です。

かさ歯車(ベベルギヤ)

かさ歯車(ベベルギヤ)は、円錐台の形状を持つ歯車で、特に軸が交差する「交差軸歯車」として広く利用されています。「Bevel」は「傾斜」を意味し、その特徴的な形状から、かさ歯車とも呼ばれています。かさ歯車の最大の利点は、回転運動の方向を90度に変換できる点で、例えばFR車のディファレンシャルギヤにおいて、トランスミッションからの動力を駆動輪に効率的に伝達する役割を果たします。

かさ歯車にはいくつかの種類があり、それぞれのタイプによって長所と短所が異なります。すぐばかさ歯車(ストレートベベルギヤ)は、軸に対して歯筋がねじれていないため、スラスト荷重が少なく、静かで安定した動作が期待できます。一方、まがりばかさ歯車(スパイラルベベルギヤ)は、歯の噛み合い率が高く、強度が高いため、騒音や振動が少ない点が大きな利点です。また、ハイポイドギヤでは軸がオフセットしているため、さらに騒音や振動が抑えられます。

しかし、かさ歯車にも短所があります。例えば、すぐばかさ歯車は、噛み合い率が低いため、高速回転時に騒音や振動が増加する傾向があります。まがりばかさ歯車では、スラスト荷重が大きくなるため、軸受けに対する負荷が増加します。また、ハイポイドギヤは、歯当たり面が滑りやすく、エネルギーロスや摩擦が大きくなるという欠点があります。

ウォームギヤ

ウォームギヤとは、ウォームと呼ばれる螺旋形状のシャフトと、それに噛み合うウォームホイールからなる食い違い軸歯車です。ウォームギヤは、主に90度の交差角度を持ち、大きな減速比を得るために設計されています。特徴として、ウォームギヤは高い減速比を提供し、回転運動を効率的に方向転換できることが挙げられます。このため、精密機械や昇降装置など、静音性が求められる場面での使用に適しています。さらに、セルフロック機能が備わっており、動力が停止した際に、外部からの力で逆回転させることが困難になります。この特性は、安全性を確保するために利用されることが多く、特に昇降機や自動車のステアリングシステムでの応用が広がっています。

一方で、ウォームギヤの短所として、摩擦が大きく摩耗しやすいことが挙げられます。ウォームホイールと噛み合う部分における摩擦が増すことで、エネルギー伝達効率が低下し、動力の一部が無駄になる傾向があります。このため、ウォームギヤの運用には専用の潤滑油が必要であり、定期的なメンテナンスが欠かせません。摩耗や効率低下を防ぐためには、適切な潤滑管理と歯車設計が求められるため、ウォームギヤの選定には慎重さが求められます。

ギヤの機能名称と役割

ここでは、ギヤにおける重要な機能特性と役割について解説いたします。

減速比:減速比は、ギヤ間の速度変化を示す比率です。例えば、大きなギヤが小さなギヤを駆動する場合、大きなギヤの回転数は減少し、小さなギヤの回転数は増加します。このプロセスにより、トルクと速度のバランスが変化します。

スラスト荷重:スラスト荷重とは、ギヤや軸に沿った方向にかかる荷重を指します。通常、平行軸のギヤではこの荷重はほとんど発生しませんが、傾斜軸や円錐ギヤでは重要な要素となります。

セルフロック機能:セルフロック機能は、ギヤが特定の条件下で回転を自動的に防ぐ機能です。例えば、摩擦によって回転方向を自動的に制限し、ギヤが逆回転しないようにする機能があります。

インボリュート干渉:インボリュート干渉とは、インボリュート曲線を持つ歯車で発生する干渉のことです。通常、適切な設計と調整によってこの干渉を最小限に抑えることができます。

トロコイド干渉:トロコイド干渉は、トロコイド曲線を持つ歯車で発生する干渉です。この干渉も、適切な設計と調整によって管理することが必要です。

潤滑管理:潤滑管理は、ギヤや機械部品の摩耗や損傷を防ぐために適切な潤滑を行うプロセスです。潤滑剤の選択と適切な量の供給が重要であり、これによって機械の寿命と性能が維持されます。

ギヤの製造工程

歯車の製造工程は、いくつかのステップで構成されます。まず、旋盤加工により材料の内外径を削り、歯車の基本形状を形成します。この段階では歯がまだありません。

次に、ホブ盤加工を用いて、歯を削り出し、精密な形を作り出します。その後の焼入れ工程では、歯車を高温で処理し、冷却することで強度と耐久性を向上させます。最後に、研磨工程を経て、歯車の表面を磨き、さらに高い精度を実現します。これらの工程により、耐久性と精度の高い歯車が完成します。

当社だからこそ可能なギヤの長寿命化提案

当社では、丸物部品の長寿命化提案を得意としており、Φ100~Φ400程度の中型ギヤの製造については特に自信があります。当社だからこそ可能な中型ギヤの長寿命化提案については、下記の通りです。

豊富なギヤ製造実績を活かした長寿命化技術
当社は、自動車業界で培った高い技術力を基に、ギヤの長寿命化を実現する提案に自信があります。耐摩耗性や高強度が求められるギヤに対して、焼入れや表面処理を駆使し、ギヤの寿命を延ばす最適な技術を提供します。精密な旋盤加工や歯切り、さらに研磨を通じて、長期間の使用に耐える高品質なギヤを製造しています。

コストバランスを考慮した最適提案
当社のギヤ製造では、ただ強度を上げるだけではなく、製品寿命とコストのバランスを考慮した提案を行います。必要以上に強度を向上させると、コストが増大するため、あえて適度な摩耗を許容することで、交換頻度を増やしながらもコストを抑える設計も可能です。これにより、お客様にとって最適なコストパフォーマンスを実現します。

大小様々なギヤ加工に対応可能
当社は、小径から大径まで、様々なギヤの加工に対応しています。特に直径300mm以上の大型ギヤについても、クレーンを使ったセットアップが必要な重作業にも対応可能です。また、歯切り加工やキー溝加工、Vプーリーのような複雑形状にも対応し、高精度な仕上げ加工を実現しています。これにより、長寿命化と精度の両立を可能にし、お客様の要望に応えています。

外注ネットワークを活かした高精度仕上げ
当社は、独自の外注ネットワークを活用し、ギヤの歯切りや焼入れ、研磨などを最適な協力企業と連携して行います。このネットワークを活用することで、製品の品質を高め、納期の短縮も実現しています。さらに、ギヤの耐摩耗性や精度を高めるための細やかな調整を行い、お客様に最適なソリューションを提供します。

短納期対応と一貫生産体制
当社は、ギヤの製造だけでなく、必要に応じた溶接や組立工程まで一貫して対応する体制を整えています。特に短納期での対応が求められるケースでも、迅速かつ柔軟に対応可能です。他社では断られるような単品や小ロットの特急依頼にも対応し、お客様の生産ラインのトラブルを最小限に抑えるためのサポートを提供します。

当社のギヤ長寿命化提案は、耐久性とコストのバランスを追求したものです。高精度なギヤ製造とお客様に合わせた柔軟な提案で、信頼されるパートナーとしてお応えいたします。

加工事例

ハスバ歯車

材質:S45C

サイズ:Φ130×35

精度::+0.021~0

こちらは工業設備で使用されるハスバ歯車です。サイズはΦ130×35mmで、材質はS45Cを使用しております。加工工程としては、まず旋盤加工を行い形状を作り、その後歯切、高周波焼入れ、旋盤仕上げ、キー加工、および歯研を実施しております。

本製品は、高周波焼入れ後に内径が縮むため、旋盤で仕上げた後、内径でキー加工を行います。このように、精密な加工技術を駆使することで、高い精度(+ 0.021〜0)を維持しつつ、品質を確保しています。

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カサ歯車(大)

材質:S45C

サイズ:Φ470×117

精度::Φ75(+0.030~0)

こちらは工業設備で使用される大カサ歯車です。サイズはΦ470×117mmで、材質はS45Cを使用しております。加工工程としては、旋盤加工、歯切、歯先高周波焼入れ、旋盤仕上げ、キー加工を行っています。

本製品は、高周波焼入れ後に内径が縮むため、旋盤で仕上げ加工を行い、その後キー加工を実施しています。また、小カサ歯車とワンセットで使用されるため、噛み合いの精度が非常に重要です。精密な歯研を行うことで、高い精度を確保しています。

カサ歯車(小)

材質:S45C

サイズ:Φ191×116

精度::Φ80(+0.030~0)

こちらは工業設備で使用される小カサ歯車です。サイズはΦ191×116mmで、材質はS45Cを使用しております。加工工程としては、旋盤加工、歯切、歯先高周波焼入れ、旋盤仕上げ、キー加工を行っています。

本製品は、高周波焼入れ後に内径が縮むため、旋盤で仕上げ加工を行い、その後キー加工を実施しています。また、かさ歯車(大)とワンセットで使用されるため、噛み合いの精度が非常に重要です。

ギヤのことはローラー・シャフト旋盤加工 長寿命化ナビにお任せを!

ローラー・シャフト旋盤加工 長寿命化ナビは、丸物加工品を専門とし、耐摩耗性や高強度が求められる製品の長寿命化と機能向上を実現する技術提案に自信を持っています。当社の金属コーディネーターが丁寧なヒアリングを行い、焼入れや表面処理の最適な選定を行うだけでなく、形状変更や機構改善などの斬新な提案も行い、お客様にとって最適な解決策を提供します。

対応可能な製品は、直径φ5の小さいピンからφ100のピンまで、長さも様々な丸物製品に対応しております。特にΦ300~600までの、馬力がない旋盤では削ることができないような、クレーンを用いて機械にセットする必要がある、やや取り回しがしづらいような中型丸物部品について、多くのお客様からご相談をいただいております。協力会社の加工ネットワークも駆使することで、最大φ900までの比較的大径な丸物加工まで対応可能です。

ローラー・シャフト旋盤加工 長寿命化ナビのもう一つの強みは、特急対応が可能なことです。急な加工依頼にも迅速に対応し、お客様のプロジェクトの進行をサポートします。

このように、ローラー・シャフト旋盤加工 長寿命化ナビは多様なニーズに応える高い技術力と柔軟な対応力を持ち、お客様の製品開発を強力に支援します。丸物加工品の製造において、耐久性や精度を求めるなら、ぜひローラー・シャフト旋盤加工 長寿命化ナビにお任せください。お客様のご相談をお待ちしておりますので、どうぞお気軽にお声がけください。

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