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SS400に浸炭焼入れはできる?硬度・硬化層深さから注意点まで解説!

2026/08/13

  • 長寿命化
  • 表面処理
  • 加工
SS400に浸炭焼入れはできる?硬度・硬化層深さから注意点まで解説!

SS400に浸炭焼入れはできるのかを、材質規格・硬度・硬化層深さから解説。成分が保証されない注意点と、肌焼鋼への材質変更を含む長寿命化の選び方をご紹介します。

「SS400で作ったローラーが、思ったより早く摩耗してしまう」「表面だけ硬くしたいのに、焼入れを頼んだら断られた」。当社にはこうしたご相談が定期的に寄せられます。SS400は入手性がよく価格も安いため、機械部品の材料として広く使われています。ところが硬さを求めた途端、この材料は設計者を悩ませる存在に変わります。

本記事では、SS400という材料の特徴から浸炭焼入れの仕組み、SS400に浸炭焼入れを行う際の注意点、そして長寿命化を狙う場合の材質選定の考え方までを整理します。愛知県名古屋市で丸物旋盤加工を手がける当社が、実際のご相談の場でお伝えしている内容をそのまま書きました。最後に、材料選定・表面処理・加工方法の3要素から当社がご提案している方法もご紹介します。

SS400とは?浸炭焼入れを検討する前に押さえたい材質の特徴

【定義】 SS400とは、JIS G3101に定められた一般構造用圧延鋼材のうち、引張強さ400〜510N/mm²の区分に相当する鋼材のことです。

SS400を「炭素鋼の一種」と理解している方は多いのですが、浸炭焼入れを検討するうえでは、もう一段深いところを知っておく必要があります。それは、この材料が成分ではなく強度で規定されているという点です。

JIS G3101で規定されているのはPとSだけ

SS400の化学成分について、JISが定めている項目は限られています。

元素SS400の規定値
C(炭素)規定なし
Si(けい素)規定なし
Mn(マンガン)規定なし
P(りん)0.050%以下
S(硫黄)0.050%以下

表のとおり、規定があるのはPとSの2元素のみで、いずれも0.050%以下と定められています(出典:SS400の規格|砥石選定ナビ)。熱処理の効き方を決める炭素量については、規格上どこにも書かれていません。

つまり、同じ「SS400」という名前で納入された材料でも、メーカーやロットが変われば炭素量が違う可能性があります。当社では、この一点がSS400の熱処理を語るうえで最も重要な前提だと考えています。

焼入れが効かないのは炭素量が足りないから

鋼が焼入れで硬くなるのは、加熱によって炭素が固溶した状態から急冷され、マルテンサイトという硬い組織に変態するためです。この反応には炭素が必要で、炭素量が少なければ、いくら急冷しても硬さは出ません。

SS400の素材状態での硬さは、ビッカース硬さでHV120〜140程度です(出典:SS400の規格|砥石選定ナビ)。実際に流通しているSS400の炭素量は低炭素域にあることが多く、そのまま焼入れをしても、期待した硬さに届かないケースがほとんどです。硬さが多少上がったとしても、脆さが増すリスクと引き換えになるため、SS400への直接焼入れは一般に推奨されていません。 関連記事:S45Cの特徴と加工方法とは?

それでもSS400が選ばれ続ける理由

硬さが出ないと分かっていても、SS400が使われ続けるのには理由があります。

  • 価格が安い
  • 入手性がよい
  • 溶接性に優れる
  • 切削しやすく、加工コストを抑えやすい

当社でも、カバーやブラケットのように硬さを求められない部品では、SS400を積極的に採用しています。 関連記事:SS400製カバーの加工事例 材料としての優劣ではなく、求める機能に対して適材かどうかが判断の軸になります。

浸炭焼入れとは?SS400を硬くできる仕組み

【定義】 浸炭焼入れとは、鋼の表面から炭素を浸み込ませたうえで焼入れを行い、表面だけを硬くする表面硬化処理のことです。

炭素が足りないなら、外から入れればよい。浸炭焼入れの発想はここにあります。低炭素鋼でも表面硬さを確保できるため、歯車やシャフト、ローラーなど、摩耗に耐えながら折れてほしくない部品に古くから使われてきました。 関連記事:浸炭焼入れとは?効果、長寿命化への応用まで徹底解説!

表面に炭素を入れてから焼入れする

処理の流れは、加熱・浸炭・焼入れ・焼戻しの4段階に分かれます。

一般的なガス浸炭では、鋼をオーステナイト域まで加熱した炉内で炭素を含む雰囲気にさらし、表面から内部へ炭素を拡散させます。狙った深さまで炭素が入ったところで急冷すると、炭素量が増えた表層だけがマルテンサイト化して硬くなり、炭素量が変わっていない芯部は粘り強いまま残ります。表面は硬く、内部は粘るという二層構造が、浸炭焼入れの本質です。

表面硬さと有効硬化層深さの目安

浸炭焼入れの仕上がりは、2つの数値で表現します。

項目一般的な目安
表面硬さ低温焼戻し(180〜200℃)後でHV650〜800程度
有効硬化層深さ表面からHV550の位置までの距離。0.3〜1.0mm程度を指定することが多い
芯部硬さ素材の炭素量に依存し、硬化しない

表面硬さの目安は、鋼種を問わずおおむねこの範囲に収まるとされています(出典:浸炭焼入とは?設計者のための材料や硬度とひずみの考え方|機械技術ノート)。硬化するのは表面から1mm以下の範囲にとどまるため、深い位置まで硬さが必要な部品には向きません(出典:SS400って焼き入れできるの|山城製作所)。

高周波焼入れ・窒化との違い

表面を硬くする方法は浸炭焼入れだけではなく、部品の使われ方によって選び分けます。

処理硬さの出し方適した素材特徴
浸炭焼入れ表面に炭素を入れて焼入れ低炭素鋼・肌焼鋼(C0.2%以下)硬化層を深くとれる。変形が出やすい
高周波焼入れ素材の炭素で表層だけ焼入れ中炭素鋼(S45Cなど)短時間・部分処理が可能。素材に炭素が必要
窒化窒素を拡散させる窒化鋼・合金鋼変形が小さい。硬化層は浅い

SS400のように素材の炭素量が少ない材料では、高周波焼入れは硬さが出ないため選択肢から外れます。 関連記事:高周波焼入れとは?シャフトやギヤの耐久性を高めるためのポイントとは? ただし、部品形状や要求硬さによって最適な処理は変わるため、この表だけで決めきれるものではありません。

SS400に浸炭焼入れはできるのか?

【ポイント】 処理そのものは可能です。ただし当社では、寿命が問われる部品への適用は慎重に判断すべきだと考えています。

ここまで読んで、「では SS400 に浸炭焼入れをすれば解決するのでは」と思われた方もいらっしゃると思います。答えは、できる、けれども条件付きです。

結論、処理そのものは可能

SS400は低炭素鋼に分類されるため、浸炭という手段で表面に炭素を送り込むことはできます。実際、SS400材への浸炭焼入れや浸炭窒化焼入れを引き受けている熱処理業者は少なくありません(出典:SS400って焼き入れできるの|山城製作所)。表面の傷付きや軽度の摩耗を防ぎたいだけであれば、SS400への浸炭は現実的な選択肢になります。

ただし成分が保証されていない

問題は、記事の冒頭で触れた「炭素量が規定されていない」という一点に戻ってきます。

浸炭は、素材にもともと含まれている炭素の上に、外から炭素を積み増す処理です。土台となる炭素量が分からなければ、仕上がりの炭素濃度も、硬化層の組織も、狙って作ることができません。この点について、SS400は「成分が保証されていないので、浸炭組織が異常になることがあり、信頼性の必要な機械部品には適しません」と明確に指摘されています(出典:浸炭焼入とは?設計者のための材料や硬度とひずみの考え方|機械技術ノート)。

浸炭用として本来想定されている鋼種は、S09CK〜S20CK、S10C〜S20C、SCM415H〜SCM420H、SUM22、SUM24Lなど、いずれも炭素量が0.2%以下に管理された材料です(同出典)。成分が管理されているから、狙った硬さが再現できる。順番が逆になっていない点が、肌焼鋼とSS400の決定的な違いです。

使ってよい場面と、避けたほうがよい場面

当社では、次のように切り分けてご案内しています。

判断部品の条件
SS400への浸炭も検討できる単品・短期使用、荷重が軽い、表面の傷付き防止が目的、硬さのばらつきが許容できる
別材質を推奨する繰り返し荷重がかかる、量産で品質を揃えたい、硬さや硬化層深さを図面で保証する必要がある、寿命が問われる

搬送ローラーや駆動シャフトのように、回り続けて摩耗と向き合う部品は後者に入ります。 関連記事:SUJ2の特徴と加工のポイントから熱処理まで徹底解説! 一方で、治具の当たり面のように「傷が付かなければよい」部品まで高価な材料に変える必要はありません。

SS400へ浸炭焼入れを行う際に確認すべきポイント

【ポイント】 SS400での浸炭を進める場合は、合否判定の基準・変形量・図面指示の3点を事前に決めておくと、後戻りが減ります。

それでもSS400で進める、という判断は当然あり得ます。その場合に、当社が事前の打ち合わせで必ず確認している項目をお伝えします。

硬さの合否判定をどこで取るか

浸炭焼入れの検査で最も揉めやすいのが、硬さをどこで測るかという問題です。

表面硬さだけを見るのか、断面を切って有効硬化層深さまで確認するのかで、必要な工数も費用も変わります。有効硬化層深さはHV550の位置までの距離と定義されているため、判定にはビッカース硬さ試験が必要になります。表面のロックウェル硬さだけで合否を決めていると、硬化層が薄くても合格になってしまう場合があります。ロットごとに炭素量が振れるSS400では、抜き取り検査の頻度も含めて先に取り決めておくことをおすすめします。

変形(ひずみ)と加工代の考え方

浸炭焼入れでは、熱応力と変態応力によって部品が変形します。傾向として外径は縮小することが多く、細長いシャフトほど曲がりも出やすくなります(出典:浸炭焼入とは?設計者のための材料や硬度とひずみの考え方|機械技術ノート)。

硬化層が1mm以下しかない以上、熱処理後の研削で取れる量には限りがあります。取りすぎれば硬い層を削り落としてしまい、残しすぎれば寸法が入りません。当社では、熱処理前の旋盤加工の段階で、熱処理後の研削代を見込んだ寸法に仕上げる進め方を標準としています。残留オーステナイトによる経年変形が懸念される場合は、サブゼロ処理を挟む選択肢もあります。 関連記事:サブゼロ処理とは?

図面にどう指示するか

図面に「浸炭焼入れ」とだけ書かれた状態で持ち込まれるケースは、実際によくあります。この書き方だと、熱処理業者ごとに仕上がりが変わってしまいます。

最低限、次の3項目は指示に含めてください。

  • 表面硬さの範囲(例:HV650〜800、またはHRC58〜62)
  • 有効硬化層深さの範囲(例:0.5〜0.8mm)
  • 硬さを保証する部位(全面か、摺動面のみか)

指示が具体的であるほど、見積の精度も上がります。 関連記事:シャフト摩耗の原因と対策|シャフトをコストメリット良く活用するためには?

長寿命化を狙うなら、材質選定から見直すという選択肢

【ポイント】 硬さのばらつきに悩んでいる部品は、処理条件の調整より材質変更のほうが早く解決することがあります。

ここまでコラムを読んでいただいているあなたのように、多くの設計担当者の方が「SS400のまま、なんとか硬くできないか」と考えながら方法を探されています。当社がご提案しているのは、そこから一歩引いた視点です。

肌焼鋼に変えると硬さが安定する

なぜ材質を変えると硬さが安定するのか。答えは単純で、炭素量が規格で管理されているからです。

S15CやSCM415、SNC415といった肌焼鋼は、浸炭焼入れを前提に成分が設計されています。土台の炭素量が分かっていれば、浸炭時間と温度から仕上がりを逆算できます。ロットが変わっても同じ条件で同じ硬さが出る。量産部品では、この再現性がそのまま歩留まりと不良率に直結します。 関連記事:SCM材(クロムモリブデン鋼鋼材)の特徴と加工方法とは?

材質比較表

材質炭素量浸炭焼入れとの相性主な特徴
SS400規定なし△ 処理は可能だが仕上がりが安定しにくい安価・入手性◎・溶接性◎
S15C/S20C約0.13〜0.23%○ 標準的な肌焼鋼価格を抑えつつ成分が管理されている
SCM415約0.13〜0.18%◎ 焼入れ性がよく芯部強度も確保クロム・モリブデン添加。歯車・シャフト向き
SNC415約0.12〜0.18%◎ 靭性が高いニッケルクロム鋼。衝撃を受ける部品向き

※炭素量はJIS G4051・G4053の規格値に基づく一般的な範囲です。詳細な要求がある場合は材料ミルシートでご確認ください。 関連記事:SNC材(ニッケルクロム鋼)のそれぞれの種類と特徴、加工方法まで解説!

材料費が上がってもトータルコストは下がる

材質変更をご提案すると、「材料費が上がるのでは」と必ず聞かれます。上がります。参考値として、S50CはSS400の約1.5倍、SCM440は約2倍とされています(出典:SS400って焼き入れできるの|山城製作所)。

ただ、比べるべきは材料単価ではありません。部品1個あたりの材料費が数百円上がっても、交換周期が延びれば、部品代・交換作業の人件費・設備停止時間のすべてが減ります。単品の調達コストではなく、稼働あたりのコストで見る。当社が材質変更をご提案するときは、この視点をセットでお伝えするようにしています。もちろん、更新頻度が低い部品や単品対応の部品では、材料費の増加を回収できない場合もあります。

平野鉄工が提案する「材料選定・表面処理・加工方法」の3要素

【ポイント】 部品の寿命は、材料・表面処理・加工方法の3つが噛み合ってはじめて延びます。

熱処理業者に相談すれば処理条件は最適化できます。材料商社に相談すれば材料は手配できます。けれど、「この部品を長持ちさせるには、どの材料にどの処理を入れて、どう削るのがよいか」をまとめて考える相手は、意外と見つかりません。

3要素をまとめて検討できる

当社は、材料選定・表面処理・加工方法の3要素を一つの窓口で検討できる体制をとっています。

材質を変えれば削り方も変わります。熱処理で変形するなら、前工程の寸法を変える必要があります。工程がつながっているからこそ、切り分けて発注すると誰も全体最適を見ないという状態が起こります。当社にご相談いただく場合は、図面と使用条件(荷重・回転数・使用環境・現状の交換頻度)をお知らせいただければ、材質と処理の組み合わせからご提案します。

丸物旋盤加工での対応範囲

当社が得意としているのは、ローラー・シャフト・プーリー・ブッシュといった丸物部品の旋盤加工です。

熱処理を含む工程は協力先と連携して一括で手配し、熱処理前後の加工まで当社で管理します。窓口が一つで済むため、変形が出た際の原因切り分けも早く進みます。 関連記事:加工事例一覧

S45C⇒SNC415への材質変更でコストダウンした例

材質変更が実際に効いた事例として、S45CからSNC415に変更し、浸炭焼入れを組み合わせたケースがあります。

高周波焼入れを前提にS45Cを使っていた部品を、浸炭焼入れ前提のSNC415に切り替えることで、硬化層と靭性のバランスを取り直し、長寿命化とコストダウンを両立させたご提案です。 関連記事:S45C⇒SNC415の浸炭焼入れ提案による長寿命化&コストダウンの実現 SS400からの変更でも、考え方は同じです。

SS400の浸炭焼入れ・材質選定のことなら平野鉄工にお任せください

SS400への浸炭焼入れは、できます。ただし、成分が規定されていない材料に硬さの保証を求めるのは、設計としては無理のある頼み方です。当社は、寿命が問われる部品であれば、処理条件を追い込むより先に材質を見直すほうが確実だと考えています。

  • 現在SS400で作っている部品の摩耗にお困りの方
  • 浸炭焼入れの硬さがロットで揃わずお悩みの方
  • 材質変更のコストメリットを試算したい方

図面がお手元になくても、部品の使われ方をお聞かせいただければ検討できます。まずはお気軽にご相談ください。 関連記事:お問い合わせはこちら

よくある質問

Q. SS400の硬度はどれくらいですか?

A. 素材状態でビッカース硬さHV120〜140程度です。炭素量の規定がないため、直接焼入れでは硬さが安定しません。

Q. 浸炭焼入れの硬化層は何mmですか?

A. 有効硬化層深さは0.3〜1.0mm程度が一般的です。表面からHV550となる位置までの距離で定義します。

Q. SS400に高周波焼入れはできますか?

A. 素材の炭素量が少ないため硬さが出ず、実用的ではありません。表面硬化を狙うなら浸炭が現実的です。

参考資料

  • SS400の規格|一般構造用圧延鋼材の機械的性質・成分
  • 浸炭焼入とは?設計者のための材料や硬度とひずみの考え方|機械技術ノート
  • SS400って焼き入れできるの|山城製作所

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