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ノコ刃ネジ(のこ歯ねじ)とは?構造・台形ねじとの違いから長寿命化のポイントまで解説!

2026/08/13

  • 長寿命化
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ノコ刃ネジ(のこ歯ねじ)とは?構造・台形ねじとの違いから長寿命化のポイントまで解説!

ノコ刃ネジ(のこ歯ねじ)の非対称構造や台形ねじとの違い、用途を解説。特殊ねじ加工の難所、材質・熱処理による長寿命化、図面がない現物からの復元方法までご紹介します。

「摩耗した圧下スクリューの現物はあるものの、図面が残っていない」「ねじ山が特殊で、加工をお願いできる会社が見つからない」。当社にご相談いただく設備保全のご担当者様から、こうしたお話をいただくことが増えています。その多くに共通しているのが、ノコ刃ネジ(のこ歯ねじ)という、ねじ山が左右非対称になった特殊なねじです。一般的な三角ねじや台形ねじと違い、規格品として棚から出てくるものではありません。本記事では、ノコ刃ネジとはどのようなねじなのか、なぜ圧延設備などで使われるのかという基本から、加工を難しくしている要因、材質・熱処理による長寿命化の考え方、そして図面が残っていない場合の復元方法までを解説します。最後に、私たち平野鉄工株式会社がどのようにお手伝いできるかもご紹介します。

ノコ刃ネジ(のこ歯ねじ)とは?

【定義】 ノコ刃ネジとは、ねじ山の断面が左右非対称になっており、一方向の大きな軸荷重を受けることに特化したねじのことです。

英語では buttress thread と呼ばれます。断面を横から見ると、片側の面はほぼ垂直に立ち上がり、反対側の面は大きく寝ています。この形がノコギリの刃に似ていることから、日本では「ノコ刃ネジ」「のこ歯ねじ」といった呼び方が定着しました。

三角ねじが「締結」、台形ねじが「往復する送り」を主な役割とするのに対して、ノコ刃ネジは「押し切る」「受け止める」ための形です。当社では、圧延ラインの圧下スクリュー軸や、それに組み合わさるめねじの製作でこのねじ山を扱う機会が多くあります。ただし、あらゆる送りねじにノコ刃ネジが向いているわけではありません。荷重が両方向にかかる用途では、後述する台形ねじのほうが素直な選択になります。

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ねじ山が左右非対称になっている理由

非対称という形状には、はっきりした狙いがあります。

ねじが力を伝えるとき、荷重はねじ山の斜面に沿って伝わります。斜面が寝ているほど、軸方向の力の一部が半径方向へ逃げ、ナットを外側に押し広げる分力になります。ならば、力を受ける側の面だけを垂直に近づければよい。ノコ刃ネジは、この発想でできた形状です。

英語版Wikipediaの「Buttress thread」の記載では、荷重を受ける面は軸に対して垂直、もしくは最大でも7°程度の傾きに留められ、反対側の背面は45°前後に寝かせるとされています。荷重面を立てて力を素直に受け、背面は寝かせてねじ山の根元を太く残す。この組み合わせによって、角ねじのおよそ2倍のせん断強度が得られると、同じ資料は説明しています。

「ノコ刃ネジ」「のこ歯ねじ」「鋸歯ねじ」——呼び方の違い

同じねじを指しながら、図面や現場によって表記が揺れます。

弊社が受け取る図面でも、「ノコ刃ネジ」「ノコ歯ネジ」「のこ歯ねじ」「鋸歯ねじ」「鋸刃ねじ」と、少なくとも5通りの書かれ方を目にします。いずれも buttress thread を指しており、意味の違いはありません。ただし、社内で過去の図面を検索したり、同型品の製作履歴を探したりする場面では、この表記ゆれが厄介な壁になります。過去に一度作っているはずの部品が見つからず、一から起こし直しになるケースもございます。

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ノコ刃ネジの構造と、荷重を受け止める原理

【ポイント】 ノコ刃ネジの性能を決めているのは、荷重面と背面という2つの角度の組み合わせです。

荷重面と背面、それぞれが担う役割

2つの面には、まったく違う仕事が割り当てられています。

荷重面は、軸方向の力を受け止める面です。ここを軸に対して垂直に近づけるほど、力は素直に軸方向へ伝わり、ナットを押し広げる分力が小さくなります。背面は、力をほとんど受けません。その代わりに大きく寝かせることで、ねじ山の根元の断面積を確保し、せん断に対する余裕を生み出しています。

なぜこの形が高荷重に強いのか。答えは、役割を分けたことにあります。1つのねじ山に「力を受ける」と「折れずに耐える」という2つの仕事を同時にさせようとすると、台形ねじのように角度を折衷するしかありません。ノコ刃ネジは、面ごとに仕事を振り分けています。だからこそ、力が一方向にしかかからない用途で有利になります。

角ねじ・台形ねじ・ノコ刃ネジの比較

3種類を並べると、選定の基準が見えてきます。

項目角ねじ台形ねじノコ刃ネジ
ねじ山の角度90°(フランクが軸に垂直)30°(一般的なメートル台形ねじ)荷重面は垂直〜7°程度、背面は45°前後
得意な荷重の向き両方向両方向一方向
ねじ山の強度低め高い高い(角ねじの約2倍のせん断強度)
加工のしやすさ難しい比較的容易難しい
代表的な用途万力、ジャッキ工作機械の送りねじ圧下スクリュー、プレス機、砲尾閉鎖器

角ねじ90°・台形ねじ30°という値はキーエンス「ねじの種類」の記載、ノコ刃ネジの角度とせん断強度は英語版Wikipedia「Buttress thread」の記載によります。

表だけを見ると、ノコ刃ネジは台形ねじの上位互換のように映るかもしれません。実際には違います。荷重が反転する用途では、寝ている背面側で力を受けることになり、ねじ山が持ちません。用途が先にあって、はじめて形状が決まります。

規格はどうなっているのか

ここは、誤解が生まれやすい部分です。

ノコ刃ネジには、DIN 513(Metric buttress threads)というドイツ規格があり、Part 3で寸法差と公差が規定されています。一方、日本国内のJIS規格については、メートル台形ねじに相当するような現行の規格を、今回の調査では確認できませんでした。「JISで決まっている」と書かれた情報も見かけますが、弊社としては規格番号を確認できていないため、断定は避けます。

実務上どうしているかというと、お客様の図面に記載されたねじ山角度・ピッチ・リード・有効径をそのまま基準とし、必要に応じてDIN 513を参照しています。図面が残っていない場合の進め方については、後の章で詳しくご説明します。

ノコ刃ネジはどこで使われているのか

【ポイント】 ノコ刃ネジが選ばれるのは、力の向きが決まっていて、しかもその力が非常に大きい場所です。

圧延設備の圧下スクリューとサイジングミル

当社がノコ刃ネジを扱う場面として最も多いのが、製鉄・線材圧延の設備部品です。

圧下スクリューは、圧延ロールの間隔を調整するための軸です。鋼材を挟んで圧延する以上、ロールを押し下げる方向には巨大な反力がかかり続けます。しかも、その力の向きは基本的に一方向です。ノコ刃ネジの特性がそのまま活きる条件が揃っています。

弊社では、線材ライン用のノコ歯付き圧下スクリューや、サイジングミル用のスプライン付きノコ歯めねじの製作をご依頼いただいた実績がございます。いずれも、既存設備の消耗部品としてのご相談でした。

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プレス機やジャッキなど、力が一方向にしかかからない機械

圧延設備のほかにも、同じ条件を持つ機械は少なくありません。

プレス機の加圧軸、重量物を持ち上げるジャッキ、成形機の型締め軸。いずれも「押す」「持ち上げる」という一方向の動作に大きな力を使います。英語版Wikipediaでは、砲尾閉鎖器や万力、油井管の接続部も用途として挙げられています。共通しているのは、戻り方向にはほとんど力がかからないという点です。

なぜ台形ねじではなくノコ刃ネジが選ばれるのか

設計者がノコ刃ネジを指定する理由は、突き詰めると2つです。

1つは、同じねじ径でより大きな荷重を受けられること。もう1つは、荷重面が立っているぶん、軸方向のガタが出にくいことです。圧延の圧下量は製品の寸法精度に直結しますので、ねじのガタは許容できません。

ただし、この2点だけでノコ刃ネジを選ぶと、あとで困ることもございます。加工費と納期は、台形ねじよりも確実に上がります。どこまでの性能が本当に必要なのか、図面をいただいた段階で一度ご相談させていただくこともあります。

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ノコ刃ネジの加工を難しくしている3つの要因

【ポイント】 ノコ刃ネジの加工難易度は、ねじ山が非対称であることと、相手側にめねじが必要になることから生まれます。

おねじ側:非対称のねじ山を削り出す

まず、おねじ(スクリュー軸)側から見ていきます。

三角ねじや台形ねじであれば、市販のねじ切りチップをそのまま使えます。ノコ刃ネジはそうはいきません。荷重面と背面で角度が違うため、その形状に合わせた専用のバイトを用意するか、複数回に分けて片面ずつ削り込んでいく必要があります。工具の準備そのものが、工程の一部になります。

加えて、圧下スクリューのような部品は外径が大きく、全長も長くなりがちです。当社にご相談いただく圧下スクリュー軸も、長尺の丸物になることがほとんどです。長い軸を回しながら深いねじ溝を削れば、たわみとびびりが出ます。切込みを浅くして回数を増やせば精度は出ますが、その分だけ加工時間は伸びます。

めねじ側:内径での成形という最大の難所

おねじよりも厄介なのが、相手側のめねじです。

外から見えるおねじと違い、めねじは穴の内側を削ります。工具は細長く突き出した状態になり、剛性が確保できません。そこへ非対称のねじ山という条件が重なります。切りくずの排出も、内径では自由が利きません。

私たち平野鉄工株式会社では、ノコ刃ネジのめねじ加工をPBC(青銅系材料)で行った実績がございます。おねじとめねじは、材質の組み合わせを含めて一体で考える必要があります。別々に手配されるより、一社にまとめていただいたほうが結果的に早く仕上がると弊社は考えています。

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スプライン加工との複合

もう一段、条件が重なる場合があります。

サイジングミル用のめねじのように、同じ部品にスプラインが入ってくるケースです。ノコ刃ネジとスプラインでは、必要な工程も段取りも違います。ワンチャッキングで済まなければ、位置決めの誤差が積み上がります。当社では、こうした複合形状のご相談についても、加工順序の設計から一緒に検討させていただいております。ただし、形状や寸法によっては協力会社のネットワークを活用する場合もございます。

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ノコ刃ネジを長持ちさせる材質と熱処理の選び方

【ポイント】 ねじ山形状が正しく仕上がっても、材質と熱処理の選定を外すと交換頻度は下がりません。

S45C・SCM440・PBCの使い分け

材質選定は、コストと寿命のバランスをどこに置くかで決まります。

材質特徴想定する使い方
S45C入手性が良く、価格を最も抑えられる。焼入れで硬度を上げられるコストを優先したいスクリュー軸。当社でもS45Cでのノコ刃ネジ製作実績があります
SCM440調質により高い強度と靭性を両立できる摩耗と欠けの両方を避けたい部位
PBC(青銅系)なじみが良く、相手材を傷めにくいめねじ側、摺動する側

弊社の経験では、おねじ側とめねじ側に同じ材質を選ぶことはあまりありません。硬い相手同士を組み合わせると、かじりが起きたときの被害が両方の部品に及びます。あえてめねじ側を柔らかくして、交換する側をあらかじめ決めておく。設備保全の考え方としては、こちらのほうが扱いやすい場合がございます。

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硬度だけを上げると、かえって欠ける

ここは、弊社がお客様に必ずお伝えしている点です。

「摩耗するなら硬くすればいい」。この発想は、半分正しく、半分危険です。実際に当社では、S45Cに高周波焼入れを行ったスプライン穴付きの軸について、使用しているうちに欠けてしまうというご相談をいただいたことがあります。硬度は出ていました。足りなかったのは靭性です。SCM440へ材質を切り替え、調質を行うことで、ある程度の硬度を保ちながら粘りを持たせる。この組み合わせで、欠けは止まりました。

硬さと粘りは、どちらか一方では成り立ちません。ノコ刃ネジの荷重面のように、繰り返し大きな力を受ける面ではなおさらです。

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表面処理で摺動面を守るという選択肢

材質を変えずに寿命を延ばす方法もあります。

硬質クロムめっき、溶射、窒化処理。当社では、ピストンロッドに銅溶射と硬質クロムめっきを組み合わせるなど、部位ごとに処理を分けた製作も行っております。ただし、ねじ山に膜厚を持つ処理を施す場合は、はめあいへの影響を計算に入れなければなりません。すべてのノコ刃ネジに表面処理が有効とは限りませんので、使用環境をお聞きしたうえでご提案しています。

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図面が残っていないノコ刃ネジをどう復元するか

【ポイント】 図面がなくても、現物さえあれば製作は可能です。

設備部品は、20年、30年と使われ続けます。当社にも「12年前に製作した部品について」というご相談や、37年前に納めた圧延ライン設備に関するお話をいただくことがございます。その年月のあいだに図面が失われていることは、珍しくありません。

現物を測り、ねじの素性を特定する

最初の作業は、現物から情報を取り出すことです。

ねじ山角度、ピッチ、リード、条数、有効径、そして摩耗していない部分の寸法。摩耗した部品を測る以上、どこを基準に取るかで結果が変わります。当社では、台形ネジ付きのシャフトとナットについて図面なしのご相談をいただき、寸法測定と材質分析から図面化を行い、製作までお引き受けした実績がございます。

ただし、摩耗が進みすぎている場合や、破損して形状そのものが失われている場合は、元の仕様を完全には特定できないこともございます。その際は、相手部品や設備側の条件からの推定になる旨を、事前にご説明しています。

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材質分析で「同等品」から「改良品」へ

復元するだけで終わらせない。これが弊社の立場です。

材質分析を行えば、元の部品が何でできていたかが分かります。そこで判明するのは、あくまで「当時の最適解」です。設備の使われ方が変わっていたり、より適した材料が今なら手に入ったりすることは、よくあります。同じものを作り直せば、同じ周期でまた摩耗します。ここまでコラムを読んでいただいているあなたのように、交換頻度そのものを下げたいとお考えの方には、復元と同時に材質・熱処理の見直しをご提案しています。

ノコ刃ネジの製作なら平野鉄工株式会社にお任せください

当サイトを運営する平野鉄工株式会社は、1982年の設立以来、自動車業界で積み重ねてきた実績とノウハウを活かして、さまざまな業界のお客様に金属部品を製造・納品しております。

材料選定から加工・熱処理・表面処理までワンストップ

当社の強みは、工程を分けずに引き受けられることです。

ノコ刃ネジのように材質・形状・熱処理が絡み合う部品では、どこか一工程だけを最適化しても寿命は伸びません。弊社は「材料選定」「表面処理」「加工方法」の3つを組み合わせて、部品を強く・硬く・長寿命にするご提案を行っています。固定概念に囚われない、斬新なアイデアと信頼の厚い技術力で、あらゆる金属部品のお困りごとを解決いたします。

単品・試作から、短納期のご相談まで

ラインが止まってからのご相談も、遠慮なくお寄せください。

設備部品の交換は、突発的に発生します。当社では単品・試作からの対応を行っており、既存部品のコストダウンのご相談もお引き受けしています。ただし、材料の手配状況や熱処理の外注工程によっては、ご希望の納期に沿えない場合もございます。まずは現状をお聞かせいただければ、実現できる範囲をご提示いたします。

ノコ刃ネジ関連の加工事例

  • 圧下スクリュー軸(ノコ刃ねじ付)
  • めねじ(ノコ刃ねじ付)
  • めねじ(PBC)〈ノコ刃ネジ、スプライン加工〉
  • スクリュー軸(S45C・ノコ刃ネジ)

関連記事:加工事例一覧を見る 関連記事:お問い合わせはこちら

よくある質問

よくある質問

Q. ノコ刃ネジと台形ねじは、どちらが強いですか?

A. 一方向の荷重ではノコ刃ネジが有利です。荷重が両方向にかかる用途では台形ねじが適します。

Q. ノコ刃ネジにJIS規格はありますか?

A. ドイツ規格のDIN 513があります。現行のJIS規格は確認できておらず、図面指示を基準としています。

Q. 図面がなくても製作をお願いできますか?

A. 可能です。現物の寸法測定と材質分析から図面化し、製作まで対応した実績がございます。

まとめ

ノコ刃ネジ(のこ歯ねじ)は、荷重面を軸に対して垂直に近づけ、背面を寝かせることで、一方向の大きな力を受け止めることに特化したねじです。圧延設備の圧下スクリューをはじめ、力の向きが決まっている機械で使われています。

一方で、非対称のねじ山という形状は、工具の準備から段取りまで、加工の負担を確実に増やします。めねじ側はさらに条件が厳しくなります。そして、形状が正しく仕上がっても、材質と熱処理の選定を外せば交換頻度は下がりません。

私たち平野鉄工株式会社は、ローラーやシャフトなどの丸物旋盤加工品に対して、耐摩耗性や強度を向上させる長寿命化のご提案を得意としています。ノコ刃ネジ付きのスクリュー軸やめねじについて、図面がある場合もない場合も、まずはお気軽にご相談ください。

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