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表面硬化処理の比較|S45C・SCM材で選ぶ高周波焼入れと浸炭焼入れ

2026/08/13

  • 長寿命化
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表面硬化処理の比較|S45C・SCM材で選ぶ高周波焼入れと浸炭焼入れ

高周波焼入れ・浸炭焼入れ・窒化・軟窒化を比較し、S45C・SCM材との適切な組み合わせを解説。有効硬化層深さや熱処理歪みまで、長寿命化に必要な選定ポイントをご紹介します。

ローラーやシャフトの図面を引くとき、「S45Cに高周波焼入れ」と書くか、「SCM415に浸炭焼入れ」と書くかで迷った経験はないでしょうか。前任者が残した図面をそのまま踏襲していて、なぜその組み合わせなのか説明できない。摩耗のクレームが出たとき、材質が悪いのか、処理が足りないのか、加工が原因なのか切り分けられない。当社にご相談いただくお客様の多くが、この状態から出発されています。

関連記事

S45Cの基本的な性質、機械的特性、加工方法を先に確認したい方は、基礎からまとめた記事をご覧ください。S45Cの特徴と加工方法を確認する →

本記事では、高周波焼入れ・浸炭焼入れ・窒化・軟窒化という代表的な表面硬化処理を横並びで比較し、S45C・SCM材といった具体的な鋼種と組み合わせて選ぶ方法を整理します。図面に「有効硬化層深さ」を書くときの基準や、旋盤加工の側から見た熱処理歪みの扱いまで踏み込みます。最後に、材料選定・表面処理・加工方法の3つをセットで考える当社の提案方法をご紹介します。

表面硬化処理とは?

【定義】 表面硬化処理とは、部品の芯部の粘り強さを保ったまま、表面層だけを硬くする熱処理の総称です。

ローラーやシャフトが壊れる原因は、大きく2つに分かれます。表面が摩耗してすり減る場合と、繰り返し曲げや衝撃で折れる場合です。この2つは、材料に求める性質が正反対です。摩耗に強くするには硬くしたい。折れないようにするには粘くしたい。硬さと粘り強さを1つの材料で同時に満たそうとすると、どちらも中途半端になります。

そこで生まれたのが、部品の断面を役割で分ける考え方です。表面から数百マイクロメートルから数ミリメートルの範囲だけを硬いマルテンサイト組織に変え、その内側は元の粘い組織のまま残します。表面は摩耗と面圧に耐え、芯部は曲げと衝撃を受け止める。この役割分担が、表面硬化処理の正体です。 関連記事:シャフト摩耗の原因と対策|シャフトをコストメリット良く活用するためには?

芯は粘く、表面だけ硬くするという考え方

なぜ全体を硬くしてはいけないのか、という質問をいただくことがあります。

答えは、硬い材料は脆いからです。焼入れままの高炭素マルテンサイトは、確かに硬さは出ます。ただ、そのシャフトに軸受のこじりや起動時のトルク変動がかかると、粘りがないぶん一気に割れます。全体焼入れが選ばれるのは、切削工具や金型のように、そもそも曲げ荷重がかからない部品に限られます。回転しながら荷重を受け続けるローラー・シャフトでは、表面硬化処理のほうが理にかなっています。

ただし、荷重条件によっては調質材(焼入れ焼戻し材)のままで十分持つケースもあります。表面硬化処理が常に最適解というわけではありません。

メッキ・コーティングとの違い

表面を硬くする方法は、熱処理だけではありません。硬質クロムメッキやDLCコーティングのように、母材の上に別の硬い層を積む方法もあります。

違いは、硬い層が「母材そのものか、母材の上に乗せたものか」です。高周波焼入れや浸炭焼入れは、母材の組織を変えて硬くするため、剥がれるという故障モードがありません。一方でメッキ・コーティングは膜厚が数マイクロメートルから数十マイクロメートル程度と薄く、寸法をほとんど変えずに耐摩耗性を足せる反面、密着不良による剥離のリスクを抱えます。当社では、面圧が高く剥離が致命傷になる部位には熱処理系を、寸法変化を極力避けたい部位にはメッキ系を、というのが基本的な考え方だと捉えています。

表面硬化処理の種類と分類

【ポイント】 表面硬化処理は「表面だけを焼き入れる方法」と「表面に元素を入れる方法」の2系統に分かれます。

この2系統の違いを押さえておくと、処理の選択肢が一気に整理されます。前者は母材が持っている炭素をそのまま使って表面だけ焼きを入れる方法で、後者は母材に足りない元素(炭素や窒素)を外から拡散させて硬さを生む方法です。母材の炭素量で使える処理が決まる、という後述の話も、この区別から素直に導けます。

表面だけを焼き入れる方法(高周波焼入れ・炎焼入れ)

母材の成分は変えず、加熱と冷却の範囲だけを表面に限定する方法です。

高周波焼入れは、コイルに高周波電流を流して部品表面に誘導電流を発生させ、表面層だけを850〜1050℃程度まで急速加熱してから水冷します(出典:川重テクノロジー「技術レポート:表面硬化熱処理を使いこなす」)。使用する周波数は1〜500kHz程度で、100kHz以上の高周波は表面数ミリの硬化に、数十kHz程度の中周波はやや深い硬化層に向くとされています(出典:モノタロウ「表面焼入れの種類と適用」)。加熱時間が数秒単位と短く、必要な部位だけを選んで硬化できるのが大きな利点です。

炎焼入れは、アセチレンガスと酸素の炎で表面を加熱する方法です。設備が簡便で大物にも対応できますが、温度制御の精度は高周波焼入れに劣ります。 関連記事:高周波焼入れとは?シャフトやギヤの耐久性を高めるためのポイントとは?

表面に元素を入れる方法(浸炭焼入れ・窒化・軟窒化)

母材の表面に、炭素や窒素を拡散させて硬さを生む方法です。

浸炭焼入れは、炭素量の低い鋼を850〜950℃の浸炭雰囲気に入れ、表面の炭素濃度を約0.8%程度まで高めてから焼入れします(出典:川重テクノロジー、特殊金属エクセル「表面硬化熱処理とは?」)。表面は高炭素マルテンサイトになり、芯部は低炭素のまま粘りを保ちます。硬さと靭性の差を最も大きく取れる処理です。

窒化は500〜550℃、軟窒化は550〜580℃で処理します(出典:川重テクノロジー)。焼入れを伴わない、あるいは変態点以下で処理するため、歪みが小さく抑えられるのが特徴です。反面、硬化層は浅く、深い硬化層が必要な高面圧部品には向きません。 関連記事:浸炭焼入れとは?効果、長寿命化への応用まで徹底解説!

4つの処理を横並びで比較する

代表的な4つの処理を、設計時に判断材料となる軸で並べます。

比較軸高周波焼入れ浸炭焼入れ窒化軟窒化
処理温度850〜1050℃(表面のみ)850〜950℃500〜550℃550〜580℃
硬化のしくみ母材の炭素で焼入れ炭素を拡散させて焼入れ窒素を拡散窒素と炭素を拡散
硬化層深さ深い(数百μm〜数mm)深い(0.3〜1.2mm程度の指定が一般的)浅い浅い
適用鋼種炭素0.35〜0.55%程度の中炭素鋼(S45C・SCM435など)炭素0.2%以下の肌焼鋼(SCM415・SNC415など)SACM645など窒化鋼幅広い鋼種
歪み中(硬化境界に引張残留応力)大きい小さい小さい
部分硬化可能防炭処理が必要部分的に可部分的に可

出典:川重テクノロジー「技術レポート:表面硬化熱処理を使いこなす」、モノタロウ「表面焼入れの種類と適用」、株式会社アスク「高周波焼き入れとは?」、山崎化学エイチ・テイ「SCM415・SCM420の浸炭焼入れとは?」

この表だけで処理が決まるわけではありません。同じ「歪みが大きい」でも、φ30mmの短尺シャフトとφ80mm×2,000mmの長尺ローラーでは意味がまったく違います。実際の判断には、部品形状と加工工程を含めた検討が必要です。

なぜ材質を決めないと表面硬化処理は選べないのか?

【ポイント】 表面硬化処理は母材の炭素量に強く縛られるため、材質と処理はセットでしか決められません。

処理を先に決めてから材質を選ぼうとすると、たいてい行き詰まります。逆もまた同じです。当社に届く図面で「この組み合わせは成立しないのでは」と感じるものは、材質と処理が別々のタイミングで決められた形跡があります。

高周波焼入れは炭素量0.35〜0.55%が前提になります

高周波焼入れは、母材にもともと含まれている炭素を使ってマルテンサイトを作ります。

つまり、炭素が足りない鋼種にいくら高周波をかけても硬さは出ません。適した炭素量はおおむね0.35〜0.55%とされています(出典:株式会社アスク「高周波焼き入れとは?」)。S45Cは炭素0.42〜0.48%(JIS G 4051)で、この範囲のほぼ中央に位置します。S45Cが高周波焼入れの定番材と呼ばれるのは、価格が安いからというだけでなく、成分的に最も素直に硬さが出る鋼種だからです。

一方で炭素量が0.55%を超えると、今度は焼割れのリスクが上がります。硬ければ硬いほど良い、という選び方が通用しない領域です。

浸炭焼入れは炭素量の低い「肌焼鋼」が前提になります

浸炭焼入れは、炭素が足りない鋼種を前提とした処理です。

SCM415(炭素0.13〜0.18%)やSNC415(炭素0.12〜0.18%)のように、炭素量0.2%以下の鋼種を「肌焼鋼」と呼びます。これらは、そのままでは焼きが入りません。だからこそ、表面にだけ炭素を送り込んで硬さを作り、内部は低炭素のまま粘りを残すという芸当ができます。SCM415・SCM420の浸炭焼入れでは、表面硬度約60〜62HRC、心部硬度約30〜40HRCという値が一般的です(出典:山崎化学エイチ・テイ株式会社「SCM415・SCM420の浸炭焼入れとは?」)。 関連記事:SCM材(クロムモリブデン鋼鋼材)の特徴と加工方法とは? 関連記事:SNC材(ニッケルクロム鋼)のそれぞれの種類と特徴、加工方法まで解説!

表面60HRC・芯部35HRCという断面は、高周波焼入れでは作れません。高周波焼入れの芯部は、あくまで母材の調質硬さのままだからです。

S45Cに浸炭焼入れを指定した図面が届くことがあります

ここまでの話を踏まえると、なぜこの指定が問題なのかが見えてきます。

S45Cは炭素0.42〜0.48%です。すでに焼きが入る炭素量を持っているため、表面にさらに炭素を入れても、肌焼鋼のような「表面だけ硬く、芯は粘い」という断面にはなりません。浸炭温度の850〜950℃に長時間さらされることで、結晶粒が粗大化して芯部の靭性がむしろ落ちる懸念もあります。処理そのものが物理的に不可能というわけではありませんが、コストと時間をかけた見返りが小さい選択です。

弊社としては、こうした図面が届いたとき、そのまま手配するのではなく「この部品に本当に必要なのは、浸炭による芯部の粘りなのか、高周波による表面硬さなのか」を先にお伺いする立場を取っています。図面どおりに作ることが常に正解ではない、というのが、材料選定から関わってきた当社の考え方です。

S45C・SCM材で見る、材質と表面硬化処理の組み合わせ

【ポイント】 実務で使われる組み合わせは、おおむね3パターンに集約されます。

丸物部品の図面で当社が実際に目にする組み合わせを、用途とあわせて整理します。ここに挙げていない組み合わせが誤りというわけではなく、あくまで頻度の高い順です。

S45C+高周波焼入れ

コストと納期のバランスが最も良い、標準的な選択肢です。

S45Cは市中在庫が豊富で、丸棒の入手性が高い鋼種です。高周波焼入れは加熱時間が短く、処理費も浸炭焼入れに比べて抑えられます。搬送ローラー、テンションローラー、一般的な回転軸など、面圧がそれほど高くない部品であれば、この組み合わせで十分に持ちます。ただし、芯部の靭性を上げたい場合は、高周波焼入れの前に調質(焼入れ焼戻し)を入れる必要があります。素材のまま高周波をかけると、芯部は圧延まま組織のままです。

SCM435・SCM440+調質+高周波焼入れ

S45Cでは芯部強度が足りない場合に選ばれる組み合わせです。

SCM435は炭素0.33〜0.38%、SCM440は炭素0.38〜0.43%で、いずれも高周波焼入れが可能な炭素量を持ちながら、クロムとモリブデンによって焼入れ性が改善されています。焼入れ性が良いということは、太径でも中心部まで焼きが入るということです。φ60mmを超えるような大径シャフトで、S45Cでは質量効果によって芯部が硬化しきらない場合に、SCM材への変更が有効な選択肢になります。 関連記事:ギヤシャフトの加工方法から長寿命化のポイントまで

SCM415・SNC415+浸炭焼入れ

歯元の曲げ強度と歯面の耐摩耗性を同時に求められる、ギヤやスプライン軸で選ばれます。

浸炭焼入れは処理費が高く、リードタイムも長くなります。それでも選ばれるのは、表面60HRC・芯部30〜40HRCという断面が、他の処理では作れないからです。歯車の歯面は転がり接触で高い面圧を受け、歯元は繰り返しの曲げを受けます。この2つの要求を1つの部品で満たすには、浸炭焼入れが最も確実です。

材質炭素量主な処理表面硬さの目安芯部硬さの目安向く部品
S45C0.42〜0.48%調質+高周波焼入れ55〜60HRC程度調質硬さのまま(20〜30HRC程度)搬送ローラー、一般回転軸
SCM4350.33〜0.38%調質+高周波焼入れ55〜60HRC程度25〜32HRC程度中径〜大径シャフト
SCM4400.38〜0.43%調質+高周波焼入れ55〜60HRC程度25〜32HRC程度大径シャフト、高トルク軸
SCM4150.13〜0.18%浸炭焼入れ60〜62HRC30〜40HRCギヤ、スプライン軸
SNC4150.12〜0.18%浸炭焼入れ60〜62HRC30〜40HRCギヤ、高靭性が必要な軸

炭素量はJIS G 4051・G 4053の規定値、浸炭材の硬度は山崎化学エイチ・テイ株式会社の公表値によります。高周波焼入れ材の表面硬さと芯部硬さは実務上の目安であり、調質条件と処理条件によって変動します。

図面に「有効硬化層深さ」を書くときに押さえるべきこと

【定義】 有効硬化層深さとは、表面から、規格で定められた限界硬さの位置までの距離のことです。

図面に「有効硬化層深さ0.8mm」と書いたとき、その0.8mmがどこまでの距離を指すのかを説明できる設計者は、当社の経験ではそれほど多くありません。実は、この基準は処理方法によって異なります。

限界硬さは鋼種によって変わります(JIS G 0557・JIS G 0559)

浸炭と高周波では、そもそも参照する規格が別です。

浸炭焼入れの場合、JIS G 0557(鋼の浸炭硬化層深さ測定方法)で、限界硬さは550HVと定められています。鋼種によらず一律です。

高周波焼入れの場合は、JIS G 0559(鋼の炎焼入及び高周波焼入硬化層深さ測定方法)で、炭素含有率ごとに限界硬さが変わります。

炭素含有率限界硬さ(HV)参考(HRC)
0.23〜0.33%35036
0.33〜0.43%40041
0.43〜0.53%45045
0.53%以上50049

出典:JIS G 0559「鋼の炎焼入及び高周波焼入硬化層深さ測定方法」表1

S45C(炭素0.42〜0.48%)であれば、限界硬さは450HVです。つまりS45Cの高周波焼入れで「有効硬化層深さ2mm」と指定した場合、それは「表面から、硬さが450HVまで落ちる位置までが2mm」という意味になります。同じ2mmでも、SCM415の浸炭で指定した2mmは550HVまでの距離ですから、両者は同じ数字でも中身が違います。なお、JIS G 0559は通常0.3mmを超える硬化層深さを対象としており、それ以下は受渡当事者間の協定によるとされています。

硬化層は深ければ良いというものではありません

深い硬化層を指定すれば安心、という考え方には注意が必要です。

硬化層を深くするには加熱時間を延ばす必要があり、その分だけ歪みが大きくなります。歪みが大きくなれば、後工程の研削代を増やさざるを得ません。研削代が増えれば、加工時間もコストも上がります。深さの指定は、そのまま加工費に跳ね返ってきます。

もう一点、高周波焼入れでは硬化層と未硬化部の境界に引張残留応力が発生します(出典:川重テクノロジー)。硬化層を必要以上に深くすると、この境界が部品の内部応力の高い位置と重なり、かえって割れの起点になることがあります。 関連記事:サブゼロ処理とは?

表面硬化処理の効果を削ってしまう、旋盤加工側の課題

【ポイント】 熱処理の指定が正しくても、加工工程の組み方を誤ると硬化層は機能しません。

熱処理そのものは協力会社にお願いする案件がほとんどですが、その前後の旋盤加工と工程設計は当社が担っています。だからこそ見えてくる失敗のパターンがあります。

熱処理歪みをどの工程で吸収するか

浸炭焼入れは歪みが大きい処理です。

長尺シャフトであれば、熱処理後に0.数ミリメートル単位の曲がりが出ることは珍しくありません。この曲がりを、どの工程で取るかを事前に決めておく必要があります。焼入れ後にプレスで矯正するのか、研削で取り切るのか、それとも熱処理前の粗加工段階で取り代を多めに残しておくのか。決めずに走らせると、研削工程で「代が足りない」という事態になります。

当社では、熱処理後の変形量を見込んだ取り代を粗加工の段階で設定し、熱処理を挟んだ前後で寸法を追う工程設計を標準にしています。ただし変形量は形状と長さで変わるため、初回品では実測して次回に反映する、という進め方をお願いすることもあります。 関連記事:長尺・大径シャフトの加工における3つのポイント

研削代を残しすぎると、硬化層ごと削り落とすことになります

有効硬化層深さ0.5mmの指定で、研削代を片肉0.4mm残したらどうなるか。

計算上、残る硬化層は0.1mmです。図面上は0.5mmで発注しているのに、完成品には0.1mmしか残っていない。これは実際に起こる事故です。特に浸炭焼入れは歪みが大きいぶん研削代を多めに取りたくなるため、指定した硬化層深さと研削代の関係が矛盾しやすくなります。有効硬化層深さは、研削後の寸法で成立するように指定する必要があります。

加工と熱処理を別々に外注すると、責任の所在が消えます

摩耗のクレームが出たとき、何が原因かを切り分けられないことがあります。

材質の選定が甘かったのか。熱処理条件が指示どおりでなかったのか。研削で硬化層を削りすぎたのか。加工会社と熱処理会社を別々に手配していると、この切り分けにお客様自身が立ち会うことになります。旋盤加工はA社、熱処理はB社、研削はC社という体制では、それぞれが「自社の工程は指示どおりです」と答えて終わってしまいます。

私たち平野鉄工株式会社は、材料の手配から旋盤加工、熱処理の手配、仕上げまでを一括でお引き受けする体制を取っています。窓口が1つであれば、原因の切り分けも改善提案も、当社の側で完結します。

平野鉄工が実践する、材料選定・表面処理・加工方法の3点セット提案

【ポイント】 当社は部品の長寿命化を、材料選定・表面処理・加工方法の3要素の組み合わせで実現します。

この3つを別々に最適化しても、部品は強くなりません。材質を変えれば適する処理が変わり、処理を変えれば必要な加工工程が変わるためです。

図面どおりに作る前に、処理の妥当性を確認します

当社は加工会社ですから、いただいた図面のとおりに製作するのが原則です。

ただ、S45Cへの浸炭指定のように、成分と処理の組み合わせに疑問がある図面については、着手前にご相談させていただいています。指摘したうえでお客様が「このままで」と判断されればそのとおりに製作しますが、意図を確認しないまま作って後で不具合になるより、先にお伺いするほうが双方にとって早い、というのが当社の考え方です。

熱処理は協力会社、前後工程は自社で一括管理します

熱処理設備そのものは、専門の協力会社に委託しています。

その代わり、材料手配・旋盤加工・熱処理の手配・仕上げ加工までの全工程を、当社が窓口となって管理します。お客様から見れば発注先は1社です。熱処理条件の指示も、歪みが出たときの是正も、当社が協力会社との間に立って調整します。愛知県名古屋市港区という立地から、東海地区の熱処理各社と近い距離で連携できる点も、納期短縮に効いています。

過剰仕様であれば「落とす」提案もします

長寿命化のご相談だからといって、常に上位の処理をおすすめするわけではありません。

浸炭焼入れで指定されている部品でも、実際の使用条件をお伺いすると、S45Cの高周波焼入れで十分持つと判断できるケースがあります。その場合は、処理費とリードタイムを下げる方向でご提案します。逆に、コストダウンのご相談であっても、寿命が短くなって交換頻度が上がるなら意味がありません。ここまでお読みいただいたあなたのように、「今の仕様が正しいのか分からないまま発注している」という状態を解消することが、当社のご提案の目的です。

表面硬化処理による長寿命化・コストダウンの事例

【ポイント】 材質と処理をセットで見直すと、寿命とコストを同時に改善できる場合があります。

当社が実際に取り組んだ事例のうち、材質変更と処理変更を組み合わせたものをご紹介します。

S45CからSNC415へ、材質と処理をセットで変えた事例

もともとS45Cで製作されていた部品について、SNC415への材質変更と浸炭焼入れの採用をご提案した事例です。

材質だけを上げても、処理だけを変えても、この結果にはなりませんでした。S45Cのままでは浸炭の効果が出ず、SNC415のままで高周波焼入れをかけても炭素量が足りません。肌焼鋼への変更と浸炭焼入れをセットで行うことで、表面硬さと芯部靭性を両立させ、長寿命化とコストダウンを同時に実現しています。 関連記事:S45C⇒SNC415の浸炭焼入れ提案による長寿命化&コストダウンの実現

高周波焼入れを採用した丸物部品の事例

搬送ローラーや回転軸を中心に、高周波焼入れを組み合わせた製作事例を公開しています。

材質・寸法・硬度指定・用途を掲載していますので、ご検討中の部品と条件が近いものがあれば、そのままお問い合わせの参考にしていただけます。 関連記事:加工事例:高周波焼入れ

浸炭焼入れを採用した丸物部品の事例

ギヤ・スプライン軸を中心とした、浸炭焼入れの製作事例です。

有効硬化層深さの指定値や、熱処理後の仕上げ工程の組み方まで掲載しています。 関連記事:加工事例:浸炭焼入れ

表面硬化処理の選定でお悩みなら、平野鉄工にお任せください

表面硬化処理は、処理単体で選ぶものではありません。母材の炭素量で使える処理が決まり、処理の選択で歪みと加工工程が決まり、加工工程の組み方で硬化層が残るかどうかが決まります。この連鎖のどこか1箇所でも判断を誤ると、図面どおりの硬さが出ていても部品は早く摩耗します。

平野鉄工株式会社は、愛知県名古屋市港区でローラー・シャフトをはじめとする丸物部品の旋盤加工を行っています。材料選定・表面処理・加工方法の3要素をセットでご提案し、部品を強く、硬く、長寿命化することを得意としています。

  • 現行の図面が過剰仕様ではないか確認したい
  • 摩耗が早いが、材質と処理のどちらを変えるべきか分からない
  • 加工会社と熱処理会社を別々に手配していて、窓口を一本化したい

こうしたご相談を、図面がない段階からお受けしています。現物写真と使用条件だけでも構いません。まずはお気軽にお問い合わせください。

よくある質問

Q. S45Cに浸炭焼入れはできますか?

A. 処理自体は可能ですが、炭素0.42〜0.48%の中炭素鋼のため肌焼鋼のような芯部の粘りは得られません。高周波焼入れをおすすめします。

Q. 高周波焼入れと浸炭焼入れでは、どちらが硬くなりますか?

A. 表面硬さは浸炭焼入れが60〜62HRCとやや高くなります。ただし高周波焼入れも55〜60HRC程度は得られ、差は用途によります。

Q. 図面に有効硬化層深さを書くとき、どの硬さを基準にすればよいですか?

A. 浸炭はJIS G 0557で550HV、高周波はJIS G 0559で炭素量別(S45Cなら450HV)です。処理方法で基準が異なります。

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