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「S45C+高周波焼入れ」で摩耗が止まらない理由とは?SCM材・調質・浸炭を含めた選び方を解説!

2026/08/13

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「S45C+高周波焼入れ」で摩耗が止まらない理由とは?SCM材・調質・浸炭を含めた選び方を解説!

「S45C+高周波焼入れ」で摩耗が止まらない理由を、SCM材・調質・浸炭焼入れとの比較から解説。硬度・硬化層深さ・軸径の質量効果を数値で整理し、4つの仕様の選び分け方と、平野鉄工の材質変更による長寿命化事例をご紹介します。

ローラーやシャフトが摩耗したとき、まず検討されるのが「S45C高周波焼入れを入れる」という選択です。表面をHRC50前後まで硬くできて、コストも抑えられる。合理的な判断に見えます。ところが平野鉄工にご相談いただく案件では、この仕様に切り替えたのに摩耗が止まらない、あるいは別のトラブルが出た、というケースが少なくありません。この記事では、S45C/SCM材/SCM+高周波焼入れ/SCM+浸炭焼入れという4つの仕様を、表面硬度・硬化層深さ・芯部の靭性・軸径という4つの軸で比べます。そのうえで、当社が「S45C+高周波焼入れ」を第一候補にしない理由と、実際にどう変更してどうなったかを、実績とともにお伝えします。

S45C/SCM/SCM+高周波焼入れ/SCM+浸炭焼入れ――4つの仕様の違い

【定義】 4つの仕様とは、母材となる鋼種と、そこに施す熱処理を組み合わせた指定のことを指します。

材質だけ、あるいは熱処理だけを見て決めると、狙った寿命に届かないことがあります。平野鉄工では、ご相談をいただいた最初の段階で、必ずこの2つをセットで確認しています。

4つの仕様を1枚の表で比べる

比較のため、話題の中心である「S45C+高周波焼入れ」も並べます。

項目S45C(調質)S45C+高周波焼入れSCM435/440(調質)SCM435/440+高周波焼入れSCM415/420+浸炭焼入れ
炭素量0.42〜0.48%0.42〜0.48%0.33〜0.43%0.33〜0.43%0.13〜0.23%
表面硬度HV220〜280(HRC16〜27相当)HRC50〜60(水冷)/43〜53(油冷)285〜341HBWHRC55〜65(水冷)/50〜58(油冷)HRC60〜62
芯部硬度表面と同等調質または生材のまま表面と同等調質のままHRC30〜40
硬化層深さなし(全体が同一組織)1.0〜2.0mmなし(全体が同一組織)1.0〜2.0mm有効硬化層0.3〜1.2mm(550HV基準)
引張強さ(調質後)約690MPa約690MPa(芯部)約980MPa約980MPa(芯部)
適した軸径Φ20以下Φ40以下Φ20超〜Φ80超までΦ20超〜Φ80超まで形状による

出典:JIS G 4051、JIS G 4053、焼入れ・熱処理研究所.com、山崎化学エイチ・テイ、金属データブック《たすいち》、株式会社エース

意外に感じられる箇所が2つあると思います。1つは、硬化層の深さが高周波焼入れのほうが深いこと。もう1つは、浸炭焼入れに使う鋼種の炭素量が、他と比べて極端に低いことです。この2点が、後半でお伝えする選定の要になります。

なお、ここに挙げた硬度と硬化層深さは、いずれも一般的な処理条件での目安です。実際の値は形状・肉厚・冷却方法によって変わりますので、図面段階では幅を持って考えていただくのが安全です。

「材質」と「熱処理」は、別々に決めるものではありません

図面に「SCM440」と書き、備考欄に「浸炭焼入れ」と書く。この組み合わせは成立しません。浸炭焼入れは、炭素の少ない鋼に炭素を染み込ませる処理だからです。炭素を0.38〜0.43%含むSCM440に浸炭をかけても、狙った効果は得られません。

当社では、材質のご指定をいただいた段階で熱処理の指示まで確認し、組み合わせとして成立しているかを見ています。加工に入ってから気づくと、材料の手配からやり直しになるためです。

[内部リンク]>>S45Cの特徴と加工方法とは?

[内部リンク]>>SCM材(クロムモリブデン鋼鋼材)の特徴と加工方法とは?

まず材質から。S45CとSCM材は何が違うのか

【定義】 SCM材とは、炭素鋼にクロムとモリブデンを加えることで、焼入れ性を高めた合金鋼のことです。

炭素量はほぼ同じ。違いはクロムとモリブデン

JIS G 4051が定めるS45Cの炭素量は0.42〜0.48%。JIS G 4053が定めるSCM440の炭素量は0.38〜0.43%です。数字だけを見れば、S45Cのほうがむしろ炭素は多く含まれています。

差が出るのは合金元素です。SCM440にはクロムが0.90〜1.20%、モリブデンが0.15〜0.30%含まれています。S45Cにはクロムの規定がなく、モリブデンも入っていません。

この2つの元素が何をしているかというと、焼入れのときに冷却が遅くても硬化組織ができるようにしています。「硬くなる上限」を上げているのではなく、「硬くなる範囲」を広げている、と捉えると分かりやすいと思います。

焼入れ性(質量効果)――太い軸ほど差が出ます

焼入れは表面から冷えます。軸が太くなるほど中心部の冷却が遅れ、硬化組織になりきらない部分が残ります。質量効果と呼ばれる現象です。

調質後の引張強さで比べると、差がはっきりします。

軸径S45CSCM440
Φ20以下約690MPa(中心まで硬化)約980MPa
Φ20〜40500〜600MPa約960MPa
Φ40〜80400〜500MPa約930MPa
Φ80超約400MPa以下約880MPa

出典:金属データブック《たすいち》

S45CはΦ40を超えたあたりから中心部の強度が落ち始め、Φ80では調質をかけた意味がほとんどなくなります。対してSCM440は、Φ80を超えても約880MPaを保ちます。

軸径Φ40を超えたあたりから、S45Cでは芯まで焼きが入りません

実務上の分かれ目がここです。平野鉄工でご相談を受ける摩耗部品は、Φ50〜Φ100の範囲が多く、ちょうどS45Cの限界域に入ります。

後ほどご紹介する圧延設備用キャップ(Φ82×37)も、この範囲でした。S45C+高周波焼入れで、約3か月ごとの交換が続いていた部品です。表面は硬くなっていても、その下を支える芯部が弱い。硬い皮を柔らかい土台に載せている状態では、荷重がかかったときに皮のほうが負けます。

ただし、Φ40以下であればS45Cで十分に成り立つ部品も多くあります。太いから必ずSCM、細いから必ずS45C、と機械的に決めているわけではありません。

[内部リンク]>>SCM材(クロムモリブデン鋼鋼材)の特徴と加工方法とは?

[内部リンク]>>SNC材(ニッケルクロム鋼)のそれぞれの種類と特徴、加工方法まで解説!

熱処理の違い。調質・高周波焼入れ・浸炭焼入れは何を変えているのか

【ポイント】 3つの熱処理は、硬くする場所と深さが違います。

調質は「全体の粘り強さ」を上げる

調質は、焼入れをしてから高温で焼戻す処理です。S45Cの場合、820〜870℃で焼入れし、550〜650℃で焼戻します。

表面だけを硬くするのではなく、部品全体の強度と靭性のバランスを整えるのが目的です。SCM440を調質すると285〜341HBW程度になり、引張強さは約980MPaに達します。

硬さの絶対値では焼入れままの状態に及びません。数字の上では物足りなく見えます。それでも当社が調質をご提案する場面が多いのは、割れ・欠けのトラブルが調質で解決することが多いためです。

高周波焼入れは「表面だけ」を硬くする

高周波焼入れは、コイルに高周波電流を流して部品表面だけを急速加熱し、そのまま急冷する処理です。加熱が秒単位で終わるため、必要な部分だけを狙って硬くできます。

仕上がり硬度は、S45CでHRC50〜60(水冷)またはHRC43〜53(油冷)、SCM440でHRC55〜65(水冷)またはHRC50〜58(油冷)です。硬さを保つ場合の焼戻し温度は160〜180℃とされています。

浸炭焼入れは「炭素を入れてから」硬くする

浸炭焼入れは、炭素の少ない鋼を炉に入れ、表面から炭素を染み込ませたうえで焼入れする処理です。

SCM415・SCM420を浸炭焼入れした場合、表面硬度はHRC60〜62、芯部はHRC30〜40になります。表面は高周波焼入れより硬く、芯部は靭性を残す。この組み合わせが浸炭焼入れの特徴です。

硬化層は、高周波1.0〜2.0mm、浸炭0.3〜1.2mm

意外に思われることが多いのですが、硬化層は高周波焼入れのほうが深くなります。

処理硬化層深さ深さの決まり方
高周波焼入れ通常1.0〜2.0mmコイルに流す出力と加熱時間
浸炭焼入れ有効硬化層0.3〜1.2mm(550HV基準)炉への投入時間

「浸炭のほうが本格的だから深いはず」という感覚で図面を書くと、想定と違う部品が上がってきます。深さで選ぶなら高周波焼入れ、表面硬度と芯部靭性の両立で選ぶなら浸炭焼入れ、というのが分け方の基本になります。

もっとも、有効硬化層は550HVという判定基準に基づく数値で、測り方の違う値と単純に比較はできません。図面に硬化層深さを指定される際は、判定硬さの基準も併記していただけると齟齬が減ります。

[内部リンク]>>高周波焼入れとは?シャフトやギヤの耐久性を高めるためのポイントとは?

[内部リンク]>>浸炭焼入れとは?効果、長寿命化への応用まで徹底解説!

「SCM+浸炭」と「SCM+高周波」では、そもそも鋼種が違います

【ポイント】 同じ「SCM材」でも、浸炭焼入れに使う鋼種と高周波焼入れに使う鋼種は別物です。

浸炭焼入れができるのはSCM415・SCM420

JIS G 4053では、SCM415の炭素量は0.13〜0.18%、SCM420は0.18〜0.23%と定められています。低い炭素量が、浸炭焼入れの前提です。

炭素が少ないから、表面に炭素を入れる余地がある。そして炭素が少ないから、浸炭されなかった芯部はHRC30〜40の靭性を保てます。

高周波焼入れに使うのはSCM435・SCM440

一方、SCM435の炭素量は0.33〜0.38%、SCM440は0.38〜0.43%です。高周波焼入れで硬さを出すには、母材にあらかじめ炭素が含まれている必要があります。

つまり、SCM415/420とSCM435/440では、炭素量が2倍以上違います。「SCM材」という同じ呼び名でも、設計上はまったく別の材料として扱う必要があります。

図面に「SCM440・浸炭焼入れ」と書くと成立しません

炭素を0.38〜0.43%含むSCM440に浸炭処理をかけても、表面と芯部の炭素量に差がつかず、浸炭焼入れの狙いである「硬い表面と粘る芯部」は得られません。

当社では、こうしたご指示をいただいた場合、加工に入る前に必ず確認のご連絡を差し上げています。材料を手配してから気づくと、納期に大きな影響が出るためです。

当社の浸炭実績はSNC415です

正直に申し上げますと、平野鉄工が浸炭焼入れでご提案した実績は、SCM415/420ではなくSNC415(ニッケルクロム鋼)です。設備用段付きシャフト(Φ38×127)の案件で、当初は「S45C+高周波焼入れ」というご指定でした。

硬度を上げたい、しかし材料費は抑えたい。相反するご要望に対して、S45Cのまま高周波焼入れを施すと硬度にばらつきが生じやすいと判断し、加工前にSNC415+浸炭焼入れへの変更をご提案しています。結果として、硬度のばらつきを抑えたうえで、長寿命化とコストダウンを両立できました。

浸炭焼入れに使える低炭素の合金鋼は、SCM415/420のほかにSNC415、SNCM220などがあります。どれを選ぶかは要求硬度と芯部強度、そして材料の入手性で決まります。

[内部リンク]>>SNC材(ニッケルクロム鋼)のそれぞれの種類と特徴、加工方法まで解説!

当社が「S45C+高周波焼入れ」を第一候補にしない3つの理由

【ポイント】 表面硬度だけを見れば合理的な選択ですが、当社の提案実績では他仕様へ変更した案件が目立ちます。

摩耗するなら硬くすればいい。硬くするなら高周波焼入れが安い。この筋道は間違っていません。実際、S45C+高周波焼入れは今も広く使われている仕様です。

ただ、平野鉄工が材質・熱処理の変更をご提案してきた案件を振り返ると、変更前の仕様が「S45C+高周波焼入れ」だったものが目立ちます。理由は3つあります。

理由①:硬度にばらつきが出やすい

S45Cは焼入れ性が高くありません。冷却速度が少し違うだけで、硬化組織になる部分とならない部分が分かれます。

高周波焼入れは加熱が秒単位で終わる処理です。生産性が高い反面、形状が複雑な部品では加熱のムラがそのまま硬度のムラになります。

実際、Vプーリーについて「谷側の焼きが甘いという指摘を受けた、谷側と同じ硬度で焼きを入れることは可能か」というご相談をいただいたことがあります。V溝のように山と谷がある形状では、コイルからの距離が場所ごとに変わるため、硬度をそろえるのが難しくなります。

理由②:硬化層を超えて摩耗すると、一気に地金が出ます

高周波焼入れの硬化層は通常1.0〜2.0mmです。摩耗がこの深さを超えた瞬間、その下にあるのは焼きの入っていないS45Cの地金です。

硬い表面が守ってくれている間は摩耗が遅く、突き抜けた後は急に進む。摩耗の進行速度が途中から変わるため、交換時期の予測が立てにくくなります。

理由③:靭性が足りず、段付き部やスプライン部が割れる

摩耗より先に割れが来る場合があります。スプライン穴付きスプロケット軸のご相談がその例でした。

S45C+高周波焼入れの仕様で、実機稼働時の衝撃とねじれに対して粘り強さが不足し、スプライン穴の部分が割れて欠ける不具合を繰り返していました。表面を硬くすることと、粘り強さを持たせることは、別の話です。

当社はSCM440+調質への変更をご提案しました。硬度の絶対値は下がりますが、強度と靭性を両立させたことで、割れ・欠けのトラブルは解消しています。

なぜ、硬度を下げる提案で解決したのか

割れは、応力が集中する部分で起きます。スプライン穴のような角のある形状は、まさに応力が集中する場所です。

表面だけが硬く、その直下に硬度の変化点がある状態では、そこが割れの起点になります。調質は部品全体を同じ組織にそろえる処理なので、硬度の変化点が生まれません。だから割れにくくなります。

ここまで申し上げましたが、S45C+高周波焼入れがすべての部品で不適切だということではありません。Φ40以下の軸で、荷重が小さく、摺動面が単純な形状であれば、コストと性能のバランスが取れた良い選択です。当社としては「摩耗対策として反射的にこの仕様を選ぶのは避けたい」という立場です。

[内部リンク]>>シャフト摩耗の原因と対策|シャフトをコストメリット良く活用するためには?

4つの仕様を選び分ける、3つの判断軸

【ポイント】 軸径・止めたい不具合・要求寿命の3つを順に見ると、候補は2つ程度まで絞れます。

判断軸①:軸径――質量効果で決まる境界

軸径第一候補理由
Φ20以下S45C(生材または調質)中心まで焼きが入り、約690MPaを確保できる
Φ20〜40S45C調質/SCM調質用途と荷重で判断が分かれる範囲
Φ40〜80SCM435/440+調質S45Cでは中心強度が400〜500MPaまで落ちる
Φ80超SCM435/440+調質S45Cでは調質の効果がほとんど得られない

判断軸②:止めたいのは摩耗か、割れ・欠けか

現物を拝見すると、摩耗と割れは見分けがつきます。

症状考えられる原因向かう方向
摺動面が均一に痩せている表面硬度の不足表面硬度を上げる(高周波・浸炭)
角部・段付き部が欠けている靭性の不足全体の粘りを上げる(調質)
表面が剥がれるように脱落している硬化層と芯部の境界での破壊母材ごと強くする(SCM調質・浸炭)

摩耗と割れの両方が出ている場合は、浸炭焼入れが候補になります。表面HRC60〜62、芯部HRC30〜40という組み合わせは、両立を狙った仕様だからです。

判断軸③:硬化層をどれだけ持たせたいか

摩耗の許容量が、必要な硬化層の深さを決めます。年間0.2mm摩耗する部品を5年持たせたいなら、1.0mm以上の硬化層が要ります。

高周波焼入れなら1.0〜2.0mm、浸炭焼入れなら有効硬化層で0.3〜1.2mm。この数字を摩耗速度と突き合わせると、どちらが要求に届くかが見えてきます。

ただし、摩耗速度が事前に分かっている部品は多くありません。実測値がない場合は、現行品の交換周期と摩耗量から逆算する形をおすすめしています。

切り分けチェックリスト

  • 軸径はΦ40を超えるか ── 超えるならSCM系を前提に検討します
  • 不具合は摩耗か、割れ・欠けか ── 割れなら硬度より靭性です
  • 摩耗の許容量は何mmか ── 1.0mmを超えるなら高周波焼入れの硬化層が候補です
  • 表面と芯部の両方に要求があるか ── あるなら浸炭焼入れです
  • 使用環境に腐食の要素はあるか ── あれば表面処理の併用を検討します

迷ったら、サンプル品で比べるという方法もあります

3つの軸で絞っても、2案が残ることはあります。カタログの硬度値だけでは、自社の摩耗形態でどちらが持つかまでは分かりません。

その場合は、形状・公差・面粗さをそろえたサンプル品を仕様違いで製作し、実機で同条件で摩耗させて比べる進め方があります。単価が上がる仕様への変更を社内で説明される際、実測値は強い材料になります。

[内部リンク]>>耐摩耗性の比較試験とは?金属部品の摩耗試験の種類・JIS規格・評価方法を解説!

熱処理を入れると、加工でできなくなること

【ポイント】 熱処理は寸法を変えます。焼入れ後に旋削で削って直すことは、原則としてできません。

熱処理には歪みがつきものです

加熱と冷却を伴う以上、部品は必ず動きます。実務上の目安として、熱処理による寸法変化は0.01〜0.1mm程度とされています。

公差がΦ80(-0.036〜-0.090)といった精度の部品では、この動きは無視できません。

高周波焼入れの後、内径は縮みます

平野鉄工の加工実績では、駆動車輪やハスバ歯車において、高周波焼入れを施した後に内径が収縮する傾向が確認されています。

方向が分かっていれば、事前に見込んで削っておくことができます。逆に、方向を知らずに公差ぎりぎりで仕上げておくと、焼入れ後に公差から外れます。

だから、焼入れ前の取り代と焼入れ後の円筒研削まで含めて工程を組みます

平野鉄工の工程は、旋削 → 熱処理(協力会社) → 円筒研削(自社)という順番が基本です。

焼入れ前の旋削では、仕上げ寸法に対して研削の取り代を残します。取り代が少なすぎると歪みを取りきれず、多すぎると研削に時間がかかります。この見極めは部品の形状と熱処理の種類で変わるため、図面をいただいた段階でご相談させていただく部分です。

なお、焼入れ後に硬くなった面を旋削で追い込むことは、工具の摩耗と加工コストの面で現実的ではありません。硬化後の寸法出しは研削で行う、と工程設計の前提に置いていただくのが安全です。

[内部リンク]>>ローラーシャフトとは?用途から選定方法、耐久性向上を実現する方法まで徹底解説!

コストをどう見るか

※本節は執筆保留です。4つの仕様の材料費・熱処理費・研削費について、平野鉄工様の見積実績を確認したうえで加筆します。次回お打ち合わせでのヒアリング項目です。

平野鉄工が、材質選定の段階から逆提案できる理由

【ポイント】 熱処理の手配と焼入れ後の円筒研削を一つの窓口でまとめているため、仕様変更を工程ごと組み替えられます。

熱処理は協力会社、焼入れ後の円筒研削は自社内製

正直にお伝えすると、平野鉄工は熱処理炉も高周波加熱装置も持っていません。調質・高周波焼入れ・浸炭焼入れ・油焼入れ・真空焼入れは、すべて協力会社にお願いしています。

弊社が自社で持っているのは、旋盤・マシニングによる切削加工と、自動車部品の製造で培った円筒研削の設備です。

熱処理を外に出しながら、その前後の加工を自社で押さえている。だからこそ、「この熱処理なら取り代をこれだけ残す」「この歪みなら研削で追い込める」という判断を、工程全体を見ながらできます。熱処理だけを外注に出して戻ってきた部品を、さらに別の会社で研削する体制では、歪みの責任分界が曖昧になりがちです。

丸物はΦ5mmからΦ900mmまで対応します

自社設備と加工外注ネットワークを組み合わせることで、丸物部品は最小Φ5mmから最大Φ900mmまで対応しています。自社設備のサイズを超える特大ワークについては、研削工程も含めて外部ネットワークで対応する形になります。

「S45Cで高周波焼入れ」というご依頼を、そのままお受けしない場合があります

ご指定どおりに作ることが、いつもお客様のためになるとは限りません。

先ほどの段付きシャフトの案件では、「S45C+高周波焼入れ」というご指定に対して、硬度がばらつくことを加工前にお伝えし、SNC415+浸炭焼入れへの変更をご提案しました。ご指定のまま作っていれば、数か月後に同じご相談をいただくことになっていたと考えています。

平野鉄工は、材料選定・表面処理・加工方法の3つを組み合わせて部品を長寿命化することを事業の柱にしています。図面どおりに削るだけの加工屋ではありたくない、というのが弊社の立場です。

材質・熱処理の変更でご提案した実績

【ポイント】 いずれも、お客様の既存仕様を材質と熱処理の組み合わせから見直した案件です。

圧延設備用キャップ(Φ82×37):SCM435+油焼入れへ変更し、交換周期が3か月から1年に

変更前はS45C+高周波焼入れでした。過酷な使用環境に耐えられず、約3か月ごとの摩耗交換が必要になっていた部品です。

SCM435+油焼入れへ変更したところ、交換サイクルは約1年に延び、交換頻度は3分の1になりました。表面にスラッジ(金属粉などの不純物)が出にくくなったという効果も得られています。

Φ82という径は、S45Cでは調質の効果がほとんど得られない範囲です。表面を硬くする前に、母材そのものを変える必要がありました。

スプライン穴付きスプロケット軸:SCM440+調質へ変更し、割れ・欠けを解消

変更前はS45C+高周波焼入れでした。実機稼働時の衝撃とねじれに対して靭性が不足し、スプライン穴の部分が割れて欠ける不具合を繰り返していました。

SCM440+調質へ変更し、強度と靭性を両立させたことで、割れ・欠けは解消しています。

設備用段付きシャフト(Φ38×127):SNC415+浸炭焼入れへ変更し、硬度ばらつきを抑制

「硬度を上げたい、ただし材料費は抑えたい」というご要望に対して、当初のご指定はS45C+高周波焼入れでした。

この仕様では硬度にばらつきが生じやすいと判断し、加工前にSNC415+浸炭焼入れへの変更をご提案しています。硬度のばらつきを抑えたうえで、長寿命化とコストダウンを両立できました。

中型Vプーリー:SCM440+調質へ変更し、摩耗による頻繁交換を解消

変更前はS45Cの生材でした。摩耗の進行が早く、頻繁な交換を強いられていた部品です。SCM440+調質へ変更し、耐久性を引き上げています。

要求される耐摩耗性がさらに高い場合は、SUJ2+真空焼入れという選択肢もあります。圧延設備用ローラー(Φ80×36)のダイヤ状テーパー部では、炭素鋼や調質鋼では摩耗の進行が速く、SUJ2+真空焼入れを採用しました。

掲載している寸法と交換周期は、実際にご提案した案件のものです。ただし、同じ仕様に変更すれば同じ結果が得られるとは限りません。使用環境と荷重条件によって効果は変わります。

ローラー・シャフトの材質選定は、平野鉄工へご相談ください

ここまでコラムを読んでいただいたあなたのように、多くのご担当者が「この摩耗をどう止めればいいのか」で迷いながらサプライヤーを探しておられます。材質か、熱処理か、それとも表面処理か。組み合わせの数だけ選択肢があり、しかもカタログの数値だけでは決めきれません。

図面をお送りいただければ、材質と熱処理の組み合わせからご提案します

現行品の材質・熱処理と、交換周期や摩耗量が分かるものをあわせてお送りいただけますと、より具体的なご提案ができます。摩耗した現物を拝見できる場合は、摩耗の形態から原因を絞り込むことも可能です。

平野鉄工の対応範囲

項目内容
対応寸法(丸物)最小Φ5mm 〜 最大Φ900mm
加工旋盤加工・マシニング加工・円筒研削(自社)
熱処理調質・高周波焼入れ・浸炭焼入れ・油焼入れ・真空焼入れ(協力会社手配)
表面処理硬質クロムめっき・黒染め・溶射 ほか(協力会社手配)
所在地愛知県名古屋市港区

材質選定からのVA/VE提案を含めて、まずはお気軽にご相談ください。

よくある質問

Q. SCM440に浸炭焼入れはできますか?

A. 実用的ではありません。SCM440は炭素を0.38〜0.43%含むため、浸炭の効果が得られないためです。

Q. S45CとSCM材は、どのくらいの軸径から使い分けますか?

A. Φ40が一つの目安です。これを超えるとS45Cは中心部の強度が落ち、調質の効果が薄れます。

Q. 高周波焼入れと浸炭焼入れでは、どちらが硬化層が深いですか?

A. 高周波焼入れです。通常1.0〜2.0mm。浸炭の有効硬化層は0.3〜1.2mm程度が一般的です。

参考資料

  • JIS G 4051(機械構造用炭素鋼鋼材) https://kikakurui.com/g4/G4051-2016-01.html
  • JIS G 4053(機械構造用合金鋼鋼材) https://kikakurui.com/g4/G4053-2018-01.html
  • 焼入れ・熱処理研究所.com https://www.yakiire-netsusyori.com/kakou/koshuha.html
  • 山崎化学エイチ・テイ株式会社 https://saitama-j.co.jp/260629-2/
  • 金属データブック《たすいち》 https://tasuichi.jp/
  • 株式会社エース https://ace-tech.jp/s45c-refining-standard/
  • 日興精機株式会社 https://www.nikkoss.jp/columns/post-874

※JIS G 4051およびJIS G 4053は鋼材そのものの規格であり、熱処理後の機械的性質は規定していません(JIS G 4051 附属書JD)。本文に記載した熱処理後の硬度・強度は、各社の技術資料および当社の実務上の目安に基づく参考値です。

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