お役立ち情報

TOP / お役立ち情報 / SKD11とは?特徴・硬度・熱処理から、他材質との使い分けまで徹底解説!

SKD11とは?特徴・硬度・熱処理から、他材質との使い分けまで徹底解説!

2026/08/13

  • 材質
  • 長寿命化
  • 加工
SKD11とは?特徴・硬度・熱処理から、他材質との使い分けまで徹底解説!

常温で使う金型や工具のための材料で、焼入れ・焼戻しを行うとHRC58以上の硬さが得られます。プレス金型、転造ダイス、シャー刃、ゲージなど、繰り返し当たり続ける部品に長く使われてきました。SKDという記号は、Steel Kougu Dice(鋼・工具・ダイス)に由来する日本独自の表記です。同じSKDでも、末尾の

SKD11とは?

【定義】 SKD11とは、JIS G 4404「合金工具鋼鋼材」に規定された冷間金型用の工具鋼です。

常温で使う金型や工具のための材料で、焼入れ・焼戻しを行うとHRC58以上の硬さが得られます。プレス金型、転造ダイス、シャー刃、ゲージなど、繰り返し当たり続ける部品に長く使われてきました。

SKDという記号は、Steel Kougu Dice(鋼・工具・ダイス)に由来する日本独自の表記です。同じSKDでも、末尾の数字で用途が分かれます。SKD11は常温で使う冷間金型用、SKD61は加熱した金属を扱う熱間金型用で、性格はまったく違います。ここを取り違えると、硬さは足りているのに割れる、あるいは高温で軟化する、といった不具合につながります。

海外規格ではAISI D2、DIN 1.2379がほぼ相当します。国内の特殊鋼メーカーからは、SKD11をベースにした改良鋼種としてDC11・SLD、さらに被削性と靭性を高めたDC53・SLD8などが出ています。相当鋼・改良鋼は成分が微妙に異なるため、図面で「SKD11相当」と指定されている場合は、どこまで置き換えてよいのかを確認したうえで手配することを弊社ではお勧めしています。

私たち平野鉄工株式会社は、愛知県名古屋市港区でローラー・シャフトを中心とした丸物旋盤加工を行っています。金型メーカーではありませんが、設備部品の耐摩耗対策としてSKD11をご検討されるお客様から、材質選定のご相談をいただく機会が増えています。 >>ゲージに使われる工具鋼の選び方

SKD11の成分と硬度

SKD11の性格は、成分表を見るとおおむね説明がつきます。

化学成分(JIS G 4404)

元素規定値(%)役割
C(炭素)1.40〜1.60硬さの源。炭化物を形成する
Si(ケイ素)0.40以下脱酸剤
Mn(マンガン)0.60以下焼入性の確保
P(リン)0.030以下不純物
S(硫黄)0.030以下不純物
Cr(クロム)11.00〜13.00耐摩耗性・焼入性・耐食性
Mo(モリブデン)0.80〜1.20焼戻し軟化抵抗
V(バナジウム)0.20〜0.50結晶粒の微細化

出典:JIS G 4404(合金工具鋼鋼材)。なお、タングステン(W)は意図的に添加してはならないと規定されています。

注目していただきたいのは、炭素1.4〜1.6%とクロム11〜13%の組合せです。S45Cの炭素が0.42〜0.48%であることを考えると、SKD11は3倍以上の炭素を含んでいます。この炭素がクロムと結びついてクロム炭化物をつくり、硬い粒子として組織の中に分散します。SKD11の耐摩耗性は、この炭化物が支えています。 >>S45Cの特徴と加工方法とは?

熱処理前後で硬さはどう変わるか

同じSKD11でも、熱処理の前と後では別の材料といってよいほど硬さが違います。

状態条件硬さ
焼なまし材(未熱処理)830〜880℃で徐冷HRC25以下/HBW255以下
焼入れ焼戻し後1030℃空冷 → 180℃焼戻しHRC58以上

出典:JIS G 4404。

さらに、焼戻し温度によって最終硬さは次のように動きます。

焼戻し温度硬さ(HRC)
150〜200℃60〜63
200〜250℃57〜60
500℃以上57以下

購入したままの焼なまし材はHRC25以下、つまりS45Cの生材とそれほど変わらない硬さです。だからこそ、荒加工から仕上げ手前までは焼入れ前に済ませるのが基本になります。ただし、硬さが近いからといって削りやすさまで同じではありません。この点は後述します。

SKD11が選ばれる理由と、主な用途

【ポイント】 SKD11が支持されてきた理由は、硬さそのものよりも「硬いまま寸法が動きにくい」ことにあります。

SKD11の特徴を整理すると、次の3点になります。

  • 高い耐摩耗性:クロム炭化物が摩耗の進行を抑える
  • 熱処理後の寸法安定性:空冷焼入れが可能で、油冷・水冷に比べて歪みが出にくい
  • 焼戻し軟化抵抗:モリブデンの効果で、200℃程度までは硬さが落ちにくい

このうち実務で効いてくるのは2つ目です。焼入れで大きく歪む材料は、そのぶん研削代を多く残す必要があり、加工時間も材料費も増えます。SKD11が金型材として定着したのは、硬さと寸法安定性を両立できたからだと弊社では考えています。

主な用途

代表的な用途は次のとおりです。

分野具体例
プレス金型打抜き型、曲げ型(中量〜多量生産向け)
転造・圧延工具転造ダイス、フォーミングロール
切断工具シャー刃、スリッター刃
測定・位置決め限界ゲージ、ガイドブッシュ、ノックピン

出典:Mitsuri Media「SKD11(合金工具鋼)まとめ」ほか。

弊社に来るご相談は、このうち下2つの領域に集中しています。実際に、真空焼入れを施したSKD11製ガイドブッシュを製作した実績があります。設備の中で他部品と繰り返し擦れ合い、摩耗したら止まってしまう部品です。 >>ローラーシャフトとは?用途から選定方法まで

一方で、SKD11は衝撃に強い材料ではありません。硬い炭化物が組織の中に点在しているぶん、大きな衝撃が加わると、その界面を起点に欠けや割れが生じます。叩く・受ける用途では、SKD11より靭性の高い材質のほうが長持ちすることがあります。

SKD11の熱処理|焼入れ・焼戻しと歪みの考え方

SKD11は、熱処理をして初めて材料としての役目を果たします。

焼入れ温度は高くすれば良いわけではない

SKD11の焼入れは、おおむね980〜1050℃の範囲で行われます。冷却方法は空冷が一般的で、油冷が指定されることもあります。

焼入れ条件の例冷却
980〜1010℃油冷
1010〜1030℃油冷
1000〜1030℃空冷
1030〜1050℃空冷

ここに、SKD11特有のトレードオフがあります。焼入れ温度を高くするほど、焼戻し後の硬さは上がります。ところが同時に、靭性は下がり、熱処理歪みは大きくなります。硬さだけを追って温度を上げると、割れやすく、しかも寸法の動く部品ができあがります。

弊社が熱処理を手配するときは、要求硬度をまず確認します。HRC60が本当に必要なのか、HRC58で足りるのか。この1〜2ポイントの差が、歪み量と後工程の研削代を左右します。 >>油焼入れとは?焼入れの冷却方法による違い

焼戻しは低温か高温かで性格が変わる

焼入れ後の焼戻しには、150〜200℃程度の低温焼戻しと、500℃前後の高温焼戻しの2通りがあります。

低温焼戻しはHRC60〜63と最も高い硬さが出ますが、炭化物と残留応力が組織の中に残ります。この状態で放電加工を行うと、加工熱の影響で亀裂や変形が出ることがあります。放電加工を予定している場合は、500℃以上の高温焼戻しが選ばれるのはこのためです。

真空焼入れという選択肢

SKD11の焼入れでは、真空炉を使った真空焼入れが広く用いられます。酸化スケールが出ず、表面が荒れないため、焼入れ後の仕上げ量を抑えられます。

弊社では、真空焼入れ・ソルト焼入れ・高周波焼入れ・TD処理などを外部の熱処理ネットワークで手配しています。同じ部品でも、要求硬度と歪みの許容量、そして予算によって選ぶべき方法は変わります。ただし、どの方法を選んでも歪みがゼロになるわけではありません。精度が必要な部品では、焼入れ後に円筒研削で仕上げる前提で図面と工程を組んでいます。 >>真空焼入れとは?特徴とメリット

SKD11の加工が難しいと言われる3つの理由

【ポイント】 SKD11を扱うときの難しさは、硬さそのものではなく、工程の順番と歪みの読みにあります。

SKD11の加工は、次の流れが基本です。

焼なまし材で切削 → 焼入れ・焼戻し → 研削または放電加工で仕上げ

熱処理後は硬すぎて通常の切削では歯が立たないため、仕上げは研削か放電加工に頼ります。この流れ自体は特別なものではありませんが、実務では3つの壁があります。

焼入れ前でも思ったほど削れない

焼なまし材はHRC25以下です。数字だけを見ればS45Cと大差ありませんが、被削性はS45Cより劣ります。原因は組織中のクロム炭化物で、硬い粒子が工具の刃先を局所的に削っていきます。切削条件をS45Cと同じ感覚で組むと、工具寿命が想定より短くなります。 >>旋盤加工ってなに?意味と魅力について

歪みを見込んだ取り代の設定が要る

焼入れによる寸法変化は避けられません。取り代を少なく残せば加工時間は短くなりますが、歪みが想定を超えると寸法が入らず、材料からやり直しになります。逆に多く残せば、研削工程が伸びます。SKD11の場合は空冷焼入れができるぶん歪みは比較的小さいものの、ゼロではありません。部品形状と長さによって動き方は変わるため、弊社では過去の実績から形状ごとに取り代を決めています。

大径・長尺になるほど材料費の影響が大きい

Φ50のピンとΦ400のローラーでは、材質を変えたときの金額差の桁が違います。小径部品ならSKD11との差額が数千円で収まっても、大径になると材料費そのものが見積もりの主役になります。ここが、金型部品の常識と設備部品の実務が食い違うところです。

溶接には向かない

炭素量が多いため、SKD11の溶接は基本的に推奨されません。肉盛りによる補修が必要な場合は、予熱・後熱を含めた条件管理が前提になります。摩耗した部品の再生をご希望の場合は、溶射による肉盛りをご提案することもあります。

SKD11とSKD61・SUJ2・SCM440の使い分け

「耐摩耗性を上げたい」というご相談に対して、SKD11が唯一の答えになることはあまりありません。候補は複数あります。

関連記事

ゲージ材はSKD11だけで決めず、測定条件、摩耗量、寸法安定性に応じてSK・SKS・SKHなども比較します。用途別に工具鋼を見渡すと、必要以上の材料グレードを避けやすくなります。 ゲージに使われる工具鋼の選び方 →

材質分類焼入れ後の硬さ目安得意なこと苦手なこと
SKD11合金工具鋼(冷間)HRC58〜62耐摩耗性、寸法安定性衝撃、材料コスト、被削性
SKD61合金工具鋼(熱間)HRC45〜52高温での強度、熱衝撃常温での耐摩耗性
SUJ2高炭素クロム軸受鋼HRC58〜64転がり接触、面圧大径材の入手性、靭性
SCM440クロムモリブデン鋼調質でHB250〜320靭性と強度の両立、コスト表面硬さ(要 高周波焼入れ等)
S45C機械構造用炭素鋼高周波でHRC50前後コスト、入手性、加工性耐摩耗性

※硬さは一般的な目安であり、熱処理条件によって変わります。

判断の分かれ目は、次の3つです。

使用温度。加熱された材料に触れる部品ならSKD61、常温ならSKD11の領域です。

当たり方。転がりで面圧がかかるならSUJ2、擦れて摩耗するならSKD11、叩かれる・ねじられるならSCM440という整理が実務上の出発点になります。 >>SUJ2の特徴と加工のポイントから熱処理まで徹底解説!

寸法と予算。同じ耐摩耗対策でも、Φ50とΦ400では選べる材質の幅が変わります。 >>SCM材(クロムモリブデン鋼鋼材)の特徴と加工方法とは?

「硬ければ長持ちする」とは限らない|当社の材料選定の考え方

ここまでコラムを読んでいただいているあなたのように、多くのご担当者が「摩耗するなら、もっと硬い材料にすればいい」と考えてサプライヤーを探しています。弊社としては、その前提には一度立ち止まる価値があると考えています。

硬さを上げれば摩耗は減ります。しかし、硬さを上げるほど靭性は下がります。硬いのに欠ける、という現象はここから起こります。

実際にあったご相談です。S45Cに高周波焼入れをしたスプライン穴付きの軸で、スプライン部分が使用中に欠けてしまうという不具合が出ていました。硬さは足りている。それでも欠ける。弊社はSCM440の調質材へ切り替えることをご提案し、ある程度の硬さを保ったまま粘りを確保する方向で解決しました。硬さを積み増す方向とは逆の判断です。 >>靭性と硬度の違いとは?

もう一つ、設備用のΦ400ローラーで耐摩耗化のご相談をいただいた例があります。このときは、S45C・SCM440・SUJ2・SKD11の4材質と、真空焼入れ・ソルト焼入れの2つの焼入れ法を並べ、それぞれのメリットとデメリットをご説明したうえで、お客様の予算の範囲で最適な組合せを一緒に選定しました。Φ400という寸法では、材料単価の差がそのまま見積もり全体に響きます。カタログ上の最適解と、予算の中の最適解は一致しないことがあります。

弊社が「金属コーディネーター事業」として材料選定からの逆提案を行っているのは、こうした判断を図面が出てくる前の段階で一緒に行いたいからです。図面どおりに削るだけなら、材質は決まった後の話になります。決まる前にご相談いただければ、選択肢はもっと広く取れます。

平野鉄工のSKD11加工・長寿命化提案の3つの特徴

私たち平野鉄工株式会社は、1982年に名古屋市港区で創業し、自動車業界を中心に多品種少量の金属部品を製造してきました。現在は「材料選定」「表面処理」「加工方法」の3要素を組み合わせ、部品を強く・硬く・長寿命にすることを主軸にしています。

【提案力】材料選定からの逆提案

図面をいただいてから見積もるだけでなく、使用環境・当たり方・予算をうかがったうえで、材質と熱処理の組合せを複数案でご提示します。SKD11をご指定いただいた場合でも、他材質のほうが総額と寿命のバランスが良いと判断すれば、その根拠とともにお伝えします。

【一貫対応】熱処理・表面処理まで含めた手配

真空焼入れ、高周波焼入れ、TD処理、硬質クロムメッキ、窒化処理、溶射など、独自の加工ネットワークで手配します。切削と熱処理を別々に発注する必要がなく、歪みを見込んだ取り代の設定まで含めて一括でお任せいただけます。

【加工範囲】大径・長尺の丸物旋盤と円筒研削

丸物はΦ700×4500程度まで、角物は500×500×1000まで対応可能です。円筒研削・円筒研磨まで社内工程でつながっているため、熱処理後の仕上げを含めて工程を組めます。

単品・試作1個からのご依頼にも対応しています。既存部品のコストダウンや、摩耗品の再生についてもご相談ください。

SKD11・材質選定のことなら平野鉄工にお任せください

SKD11は、耐摩耗性と寸法安定性を高い水準で両立できる材料です。ただし、材料単価は候補の中で最も高い部類に入り、衝撃には強くありません。部品の寸法が大きくなるほど、この2点が効いてきます。

摩耗や欠けでお困りの部品があれば、図面が固まる前の段階でご相談いただくのが最も効果的です。現行品の写真と、どこがどう傷んでいるかをお聞かせいただければ、材質・熱処理・表面処理の組合せをご提案します。

ローラー・シャフト・ブッシュ・ゲージの長寿命化は、平野鉄工にお任せください。

よくある質問

Q. SKD11の硬度はどのくらいですか?

A. 焼入れ焼戻し後でHRC58以上、低温焼戻しならHRC60〜63です。焼なまし材はHRC25以下です。

Q. SKD11は溶接できますか?

A. 炭素量が多いため推奨されません。補修が必要な場合は溶射による肉盛りをご提案しています。

Q. 焼入れ後のSKD11を切削加工できますか?

A. 通常の切削は困難です。焼入れ後の仕上げは研削加工か放電加工が基本になります。

関連記事